学力テスト Vol.437 その解答ー2 タマシギ ~ ワンオペ 育児~

 タマシギ ~ ワンオペ育児 ~

5月頃になると♀が♂を呼ぶ声が聞こえてきます。
しかも水鏡で、自分の姿をより美しく見せるようなところまで意識して・・・!

♀の鳴き声は、JAZZ BALLADS調のLOVE SONG♪
どうやらこの若い♂の心を鷲掴みにしてしまったようで・・・

知らず知らずのうちに♀のところへ引き寄せられてしまいます。
もうこうなったら、この歳上の♀の術中にハマったようなものです。

タマシギは一妻多夫制という少々変わった繁殖スタイルで、♀が♂を誘惑するのです。
世界には約1万種ほどの鳥がいますが、その90%以上は一夫一婦制。
一夫一婦制以外ではキジのような一夫多妻制とか、イワヒバリのような多夫多妻制、他には托卵制などがあります。

一妻多夫制は国内で繁殖する鳥の中では、タマシギと南国に棲むミフウズラだけ!
海外での繁殖に目を向けるとレンカクの仲間やヒレアシシギの仲間が一妻多夫制です。

若い♂にとっては♀のすることなすことの全てが魅力的で新鮮!
こんな間近で色っぽく羽づくろいなんてされたら、それだけで喉がカラカラ!

百戦錬磨の♀は、ただただ普通のことをしているだけなのに、♂から見たらその羽づくろいだけでも、さぞ妖艶な仕草に映っているのでしょう。

まるで初めて吉原に上がった青年が、あこがれの花魁の色香にクラクラしているという心境なのでしょう。
あこがれの花魁が近くにいると言うだけで、頭の中ではダンスホールの天井に吊ってあるミラーボールの如くキラキラと星が光り輝いて回っているのです。

うわわ~ さらに寄ってきた~~~!!

そして♂の目の前で「直接頭かき」をお披露目!
手前の♂はもう心臓がバクバクで破裂寸前です!!

このような「頭かき」行動も♂へのディスプレイってこと知ってました?

♂がお返しの「頭かき」をしたら、それは♀への忠誠を誓ったしるし!!


それから3~4日間ほど一緒にいて愛を確かめ合った後、♀は4個の卵を産みます。
この若い♂はその日からその大事な卵を一日中抱いていました。

♀は産卵の後どうするるのかって? そりゃあなた、一妻多夫と言う名前のとおり、ここから先はすべて♂に任せて新しい♂探しへ出掛けてしまいました。
だから♂は抱卵、子育ての一切を自分だけで切り盛りするのです。

4羽のヒナを連れたパパ

「ワンオペ育児」という言葉があります。「ワンオペ」というのは、コンビニなどですべての業務を一人でまかなう事を意味する「ワンオペレーション」の略です。
抱卵期間が16~18日間、その後の子育てが約18日間と言われていますが、その1ヶ月余りの間、パパはすべてを自分だけでこなさなければなりません。
 
タマシギのヒナたちは、親から引き継いだ「慎重、臆病」という性質を受けついているため、ケリの子供たちのようにそんなに親から離れてアチコチと動き回ることはないように見えますがカラス、アオサギ、イタチなど、とにかく周りは天敵だらけ! 
パパの気の休まる日はありません。

まだ前日に巣から離れたばかりなので、歩き方もヨチヨチです。

この子たちが全員、無事に育ってくれることを願うのみです!

※文中で「頭かきはディスプレイの行動」と書きましたが、この珍説を支持する話は一切ありません。




















学力テスト Vol.437 その解答-1 ホシガラス ~ 高山での喧噪 ~

 ホシガラス ~ 高山での喧噪 ~

ホシガラスは、本州中部では標高が1500m以上の山岳地帯で生息しています。

近いところで見ようと思ったら富士山の中腹ですが、今回は数が多く見られるという長野県の乗鞍岳に行ってみました。


いました、いました! 3羽の幼鳥を連れたファミリーに遭遇! 
すでに幼鳥のサイズは親と全く変わりません。
なにやら1羽のヒナに左の母親が話しかけていますが、ちょっと様子が変です。

どうもお説教をしているようなので、ドリトル先生に通訳をお願いしました。


母親「お前ね~、何回言ったらわかるんだい? 自分ばっかりが食べようとして、いつも出しゃばってきちゃダメじゃないかっ! ちった~、遠慮ってもんがあるだろうに~!」
長男「だって、オイラものすご~く腹が減ってるんだもん!」
母親「そこを我慢して平等に食べるんだってばっ! このボケナスが~!」


母親「どう?わかったかい?!」
長男「ホ~イ、ホイホイサッサノサー~」
母親「フン、そういう軽いところって、お前のアホ親父にそっくりなんだから~」


漢字では「星鴉」と書きます。
当然ですが、体の白斑を夜空の星に見立てて付けられました。

英名では「Spotted Nutcracker」といい、「Spotted」は白斑のことで「Nutcracker」とは「木の実を割るもの」という意味で、松ぼっくりなどを突き割って中の種子を取り出して食べる習性から名付けられています。
ホシガラスは他のカラス類と同様に「間接頭かき」

頭かきの後、左の翼越しに足をたたむところです。

こちらでは先ほどのファミリーが一休み

子供たちが母親にまとわりついて離れません。

「かーちゃ~ん、腹減ったよ~」
「何かくれ~~!!」
「さっきたくさん食べたじゃないか!」
母親はずっとこんな調子で、片時も自由になる時間なんてありません。
だいぶフラストレーションが溜まってきました。



そこへフラリと父親(左)が戻ってきました。

ストレスが溜まりに溜まっていた母親は父親に突撃~~!


「アンタ、どこほっつきあるいてんのさ~!! 私にばっかり子育てを押し付けて~」
右の父親はタジタジです。「た、たまには変わったもんを皆に食わせようと思って、ちょいとばっかし遠出をしてきたんでい!」
「ふーん、うまいことばっかし言って何をしてるんやら! どうせどこぞのメスの尻でも追っかけてるんだろうが!? このダメ親父が~!」
ここは標高が2100mほどの涼しいところなのに、母親の頭の中は活火山のようにカッカしてます!

子供たちもこの夫婦げんかに興味津々で見守っています。
好奇心は子供でもハンパではありません! さすがカラスの仲間です!

次男「いいぞ~、もっとやれやれ~」
三男「そうだ、そうだ~」
長男「ト、トウチャンをそんなにいじめちゃダメ~」
母親「あれ? 今、トウチャンの肩を持ったのは誰だい? お前トウチャンから何かもらってるのかい?」
長男「そ、そんなことねえやい! たまにオイラにだけちょっと内緒でくれるだけだい!」
母親「お前、もしかして何かトウチャンの弱みを握ってるのかい?」
長男「そ、そんなの知らねえやい!し、知ってたって言わねえのが、男同士の約束でい!」

何だか話題がやっかいな方向に!

母親が長男を追求している隙に、父親はそれ~ッとばかりに飛び出していきました。

「また何か持ってくっからよ~」と、サッサと逃げていきましたとさ!
今度はいつ帰ってくるのやら・・・。

























学力テスト Vol.437 頭かきシリーズ  その59

 「鬼の霍乱(おにのかくらん)」とは、どうやら日射病のことをいうらしいのですが、意味は「ふだんきわめて健康な人が珍しく病気になることのたとえ」です。

普段はあまり病気には縁がなく、昨年同居人がコロナになった時にもうつらなかったのでコロナってオイラにゃ関係ないのかも?とタカをくくっていたら、うわわ~っ、しっかりと感染してしまいました! まあ鳥枯れの時期だし、外は暑すぎるし・・休養にはいい時期としばらくはおとなしくしていることにしました。


さて本題、今回のクイズはこれ!

鳥の名前だけでは、楽すぎてつまんないだろうから久しぶりに「頭かきシリーズ」の登場で、その方法も答えてもらおうかなっと! これでも楽だって? ホントかな?









学力テスト Vol.436-3 その解答 コアジサシ その2 ~ ターン君の初飛翔 ~

この外国人のファミリーは何をしていると思います?
スマホを砂地にピッタリとくっつけて、何かを撮っているようです。

彼らが立ち去った後に近づいたら・・・やっぱり! いました! 
コアジサシの生まれたてのヒナが2羽!

彼らがコアジサシを持ち去るとか危害を加えそうなら、注意もしようかと思ったけど、何事もなく立ち去ったので事なきを得ました。
ここはサーファーや海水浴客がよく来る海岸で、その海岸への通り道にヒナたちが潜んでいたのです。

そのすぐ近くにあったコアジサシの卵 

親鳥が留守にしたのでちょっと撮らせてもらいました。こんなふうにちょっとくぼみを作っただけのところへ産卵するのです。
親鳥がいないと気付かなくて、うっかりすると卵を踏んでしまうかも?というくらいに砂浜に同化しています。

巣の周辺の外気温が34℃よりも高くなると、直射日光をまともに受け、ゆで卵になってしまうのでその場合、親は卵の上に立って日陰を作ったり、腹部を濡らして抱卵したりといろいろ工夫しているのです。

さてさて、抱卵期間の約20日間が経つと念願のヒナが誕生! 
このサイズだと、たぶん孵化後3日目以内かな?

ヒナは自分では体温調整ができません。
暑いのもダメ、ましてや雨なんてもっての外ですぐに親の腹にもぐります。


孵化して5日目頃になると、ご多分に漏れずこのヒナたちもアチコチに動き回ります。
実はこの頃が一番危険なのです。周りにはカラスやトビなど捕食者がいっぱい!


2羽のヒナが駆け出しました!我々よりもはるかに良い目や耳をしていて、親が飛んでくるとその辺りを脱兎のごとく走り回ります!! うわわ~、こちらへ向かってきました!

魚をくわえながら、時折「クリッ、クリッ」と鳴きます。

「ママ~~、こっちこっち~!!」

「かあちゃ~ん、こっちだよ~ はやく魚をちょうだい~~~!!」

こちらが近くで撮っていることなんて、まるで眼中に無し!

あまりに近くで給餌したので、画面からはみ出してしまいました。

さてさて、これは孵化してから3週間くらいのヒナ

名前を英名の「Little Tern」にちなんで「ターン君」と名付けました。
もうりっぱに風切羽が伸びています。

おっ、ちょっと姿勢を低くしたぞ!発進かな? 

少々ひるんだようで、やり直し。
周りを意識しているようです。ちょっとドキドキしちゃったかな? 

さあ、気を取り直して今度こそ!

おお、浮いた~~

飛んだ飛んだ~、そのまま50mほどの初飛翔!! やったね~っ!!
この日はこれを何回か繰り返していました。


念のために翌日も様子を見に行ったら、ターン君はもう親(写真の左下)と一緒に優雅に飛び回ってました!! 流石、これからはるばるオーストラリアやニュージーランドまたはパプアニューギニア方面などの越冬地へ、数千キロも移動する能力を持つ鳥は一味違うね~

それにしても3週間前、産まれたてのヒナの頃は5㎝かそこらで毛むくじゃらだったのが、こんな短時間で大空を自由自在に飛べるなんて、ホントにものすごいこと!!

ただし、これからが本番! 親の真似をして魚捕りも憶えなければなりませぬ!
コアジサシは水面近くや水深が50㎝ほどのところにいる小魚を探しながらダイビングで捕えます。これができなければ即、死に直結してしまうのです。まだまだ覚えることはいっぱい!!

また来年も元気な姿を見せておくれ~!!






















学力テスト Vol.436-2 その解答 コアジサシ その1 ~ 恋の駆け引き ~

 コアジサシ その1 ~ 恋の駆け引き ~


コアジサシは早いものは4月中旬頃に、はるばるオーストラリアやニュージーランドまたはパプアニューギニア方面などから渡ってきます。
このルートは環境省や外国の足環標識調査などによって明らかになっています。
そして5月中旬頃になるとコロニーを作って繁殖活動を開始します。

そこではいろいろな恋愛模様が展開されており、見ていて飽きることがありません。今回はそんなコアジサシたちの恋愛活動を垣間見ることに。

おっとその前に、忘れないうちにクイズの解答を。

コアジサシは「三前趾足」で、前に3本と後ろに1本の指があります。


コアジサシの水かきは「標準蹼型」ですが、カモメ科の中でも少々異なって「欠蹼足(けつぼくそく)といって、蹼(みずかき)に深く切れ込みが入っています。これはアジサシ類やグンカンドリの仲間にみられる特徴です。

ついでですが、当然ながら「直接頭かき」


さて本題!!
まずコアジサシの♂がとる行動は♀に気に入ってもらえるように小魚をプレゼント。これを「求愛給餌」と呼びます。

これと思った♀の気を引くように、獲ってきた魚を見せびらかします。

左の♀がこのように受け取ってくれたらOK

左の♂は顔を上げて、やった~と満足げな表情
このあと交尾をさせてもらえれば成功です。

これが一般的な求愛給餌のルーティーンですが、実は物事はそう単純ではありません。たとえ♀が魚を受け取ってくれたとしても、それが本心とは限らないのです! 
ここでコアジサシ君たちの様子をじっくり観察した結果をご覧に入れましょう。

1.純情タイプ


群れから離れたところにいた1羽の内気そうな♀に、田舎育ちの口下手な♂が意を決して近づいていきました。「お、おいらと付き合ってもらえねえだべか? だ、だめけ?」


内気な彼女は、ものすご~く恥ずかしそうでしたが「お、おらでええのけ? お、おらでえがったら、ええども ウフフ」と、魚を受け取ってくれました。めでたしめでたし!

2.もらったらこっちのもん

「へい、かのじょ~ 新鮮なのを獲ってきたぜい!」

♂「まだピチピチしてっからうめえぞ~」
♀   心の声(うわっ、暑っ苦しいのが来た~~!!)

♀「う~ん、今あまりお腹すいてないんだけど・・・」

♀「でも、せっかく私のために獲ってきてくれたんだもんね~」
(心の声)わたしゃ、青魚より白味魚の方が好きなんだけどな~


♀(心の声)ホントはメッチャ腹がすいてたんだけど、コイツってあたいの好みじゃないんだよね~ まあ、いっか!食べちゃったらあとは適当にあしらっとこっと・・・

3.完全拒絶

「ねえねえ、これもらってくんない?」

「フン、あんたなんてキライ!そばへ来ないで~」

「・・・」茫然と見送る♂でした。

4.おっかないのに見つかった!

♀が相手を気に入ってくれた時には「伏せ」の姿勢を取ります。

そこへ右からノッシノッシと歩いてきた♀を見て、♂が何やら慌て始めた様子

「ちょっとアンタ! ここで何やってんのさ~!」
「お、おれのこと? い、今 この子の悩み事を聞いてんだけど・・・」


「へ~、悩み事の相談に魚なんて持ってくるんだ~ なかなか面白いことしてんじゃん!! ケッ!」


「だってよ~、おめえにゃあこんなまずそうな小魚なんて腹の足しになんないし、失礼じゃん!」
「あたいはそんなに大飯ぐらいかいっ!!このバカが~!」


「だからよ~、このちっちゃくてひ弱そうな子に栄養のあるもんを食べさせようと思ってよ・・・へへへ」もう、しどろもどろで支離滅裂です!
このあと血を見たかって? それは皆さんの想像に任せましょう。

5.食べるのが生きがい型

「ダーリ~~ン、まだ~ 腹減って死にそうだよ~~! 早く、早く~~!!」

「おう、ベイビ~ すぐ行くぞ~ でっかいイワシが獲れたぞ~!」

砂浜で恥ずかしいくらいに騒ぎ立てているのは、彼の可愛い可愛いガールフレンド!!
ただ、大食漢のため、いつもいつも大騒ぎするのが玉にキズ! でも彼女の為なら、例え火の中 水の中・・・と大忙しなのです。

それにしてもこの彼女は発育が良すぎるようです!!

6.ばれちゃった!


あれれっ?こちらの♀はチャラオっぽいのが気に入ったようです。好みはそれぞれ異なるようです。そこへ左から飛んできたのは・・・

ごめんなさい~~!! もうしませ~ん!
留守の間を狙っちゃいけません! メスはとぼけて知らんぷり!

7.ああ無常

せっかく新鮮な魚を獲ってきたのに、誰も彼のことを振り向いてくれません!
ただオロオロするばかりで見ていて気の毒になります。


上記の1~7はホンの一例です。

♂が一生懸命に魚をプレゼントしても知らん顔されたり、「おおっ受け取ってくれた~、やった~!と安心はできませぬ! たとえ♀が魚を受け取ってもそれが愛を受け入れたとは限らないのです。そんなスンナリと物語が運ぶ事例は稀!! ぬか喜びは地獄への入り口!閻魔大王がおいでおいでと手招きしています

顔ではニコッと笑って「あら~、ピチピチしておいしそ、素敵~!」と言っていても、腹の中では「フン、こんな小魚で私を釣ろうなんて百年早いわっ!だけど、ちょっとお腹がすいてるから、もらっとくか」と思っているのかもしれません。

他の♂がもっと活きのいいりっぱな魚を持ってくれば、前の♂のことなんてコロッと忘れて、その魚を受け取ることは大ありなのです。

という訳で、♂を決めるのは♀の気まぐれな選択権にかかっているのです!! 

ただし、♀は丈夫な子供を産むため、子孫繁栄のための行動なのであって、決してその場の感情で♂を選んでいるわけではありません。

この♂は健康か?子育てはしっかり手伝いそうか? 「高学歴、高身長、高収入」の3Kだけで選択しているわけではないことは判ってやってください。 

続きは次回へ。