オオジシギ ~ カミナリとヤギ ~
まずはジシギとは何ぞや?から。多くのシギ類のように干潟や河口には行かずに、内陸の水田や草原を好むことから「地鴫(じしぎ)」類と呼ばれています。

国内ではタシギ・ハリオシギ・チュウジシギ・オオジシギ・アオシギの5種類 ( いずれもシギ科タシギ属 )をジシギ類と称します。その中ではオオジシギだけが日本で繁殖をしていて、残りの種類は旅鳥として春と秋に国内を通過します。
オオジシギの繁殖の多くは北海道です。以前は国内繁殖の方が圧倒的に多いと言われていましたが、現在でサハリンやウスリー流域などの方が多いとされているようです。
静岡県では、かつては朝霧高原でよく見られました・・・が、最近では激減傾向にあって淋しい限りです。それでも富士山麓の草原、とくに自衛隊の北富士演習場に行けば、毎年必ず出会うことができます。
早朝は枯れ木に止まって囀ります。
囀るといっても、彼の歌声は草原の小鳥たちのような美しいメロディではなくて「ジェ~ップ、ジェ~ップ」と、かなり変わったダミ声で鳴きます。
彼の魅力は何といっても、そのディスプレイフライトにあります!!
大草原の上空を「ズビャ~ク、ズビャ~ク」と鳴きながら飛ぶのですが、
急降下する時に尾羽を広げ、外側の尾羽への空気抵抗を増すことによって「ゴゴゴゴゴ~~~」という振動音を出すのです。
内側の尾羽に比べて、外側の尾羽は小羽枝( しょううし )で強力に結合されており、急降下の際の振動で音が出せるような構造になっているとのことです。何という驚くべき進化!!
どのくらい時間を掛けたらこのような進化を遂げることができるのでしょう?!?!
その轟音こそが、別名「カミナリシギ」と呼ばれる所以なのです。
タシギ
少々脱線:ちなみにタシギもディスプレイフライトをします・・・が、日本では繁殖をしていないので、それを観察することはできません。
オオジシギほどの迫力はなく「ヤギの声」に似た音を出すとのこと・・・ぜひとも一度聞いてみたいものです・・・ここまで書いて思いついたのは、英語検索での海外の情報!
➡ 国内版では見つからなかったけど、タシギならヨーロッパにもいるはず!ということで海外のネットを検索したら出てきました!!
おおっ、見つけた~! ビンゴ~~ 出てきたのはノルウェーのどこかの草原で、霧がかった日の出時間です。
検索は「Common Snipe Flight Display」でどうぞ!
うわわわわ~~、ホントに可愛い「ヤギの声」じゃ~~!
オオジシギのディスプレイフライト
ディスプレイフライト時の典型的な声の変化は、① 前奏その1「ジッ・ジッ・ジッ」と短い音で ➡ ② 前奏その2 急降下直前に「ジーッ・ジーッ・ジーッ」と長い調子で段々声を大きくしつつ高度をあげる ➡ ③ 急降下しながら「ズビャ~ク・ズビャ~ク・ズビャ~ク」と3~4回大声で! + 尾羽を広げて「ゴゴゴゴゴ~」という振動音を出す!!
この①から③を繰り返しながら、数分間にわたって飛び回るというパターンです。
言葉で言い表わしても伝わらないので、ネットで「オオジシギ ディスプレイ」で検索してみて下さい。多少なりとも雰囲気が分かると思います。
ホンモノを見れば「うわわ~、す・すっげ~」と惚れ惚れしますぞっ!!
だって、こんなすごいディスプレイフライトを見せてくれる鳥は他にはいませんから!!
F-15
航空ショーを見に行った人なら判ると思いますが、この「F-15戦闘機 愛称: EAGLE」が飛び出すと、寝ている赤ちゃんがひきつけを起こして泣き出す・・・という大騒音!
カミナリシギのディスプレイはこれを連想してみて下さい。
オオジシギのディスプレイフライト
富士山を横目に見ながら、青空をキャンバスにして、目いっぱい「愛してるよ~~!!」とばかりに「ズビャーク、ズビャーク」と叫んだり、尾羽を目一杯広げて「ゴゴゴゴゴ~」とすごい風切音を立てて飛び回るのです。この轟音こそがメスには心を震わせるような素晴らしいラヴコールに聞こえるのでしょう。
あなたに、もし大好きな女性がいて愛を告白しなきゃいけないと思って悩んでいるのなら、思いっきりストレートに!!・・・そう、例えばQUEENの「I Was Born to Love You」 のようにコクッちゃいましょう~ 🎵!🎵!🎵!
もしかしたら振られるんじゃないか?とか、そんな臆病ないじけた考えは捨てて、堂々と!! 行け行けドンドンと突き進め~!!
カミナリシギの雄大なディスプレイフライトを見れば、きっとそんな勇気をもらえますぞ!
時々ですが、複数で飛び回ることがあります。
この時は、何と何と一度に3羽での集団ディスプレイフライト!!
こんなスゴイのを見たのは1度きりですが、それはそれは壮観でした。
私の友人はオオジシギ君のディスプレイフライトを初めて見た時に、感動で涙を流していました! いやいや、ホントだってば!! 隣にいたんだから確かだって!
彼は少々、頑固者で通っているヤツだけど、やっぱりこのディスプレイには感じるところがあったんだろうね~!
ん?そう言うお前は鳥を見て泣いたことがあるのかって? そんなのあるに決まってるじゃん!!
その話は以前書いたことがあるので、探してみて下さいまし。
オオジシギ君は「直接頭かき」です。
この時、絶対に頭かきをやってくれると思って構えていたんだけど、気合を入れ過ぎたのか指がひきつってしまい、ホンのちょっとシャッターボタンから指を放した瞬間に頭かきを!!
ぐぎぎぎ~~ 仕方ないので、この時のは隣で撮っていた友人の写真を借用しました。グスン
繁殖を終えたオオジシギは、初秋になると遥々オーストラリア東南部まで越冬に旅立ちます。遠州地方ではこの頃に、田んぼで見かけることがあります。
その時に撮れたのがこれで、しっかりと「直接頭かき」をしてくれました。
さあ、たくさん食べて体力を蓄えたらオーストラリアまでレッツラゴー!!
来年も富士山麓で会おうぜい!!