学力テスト Vol.427-1 その解答 ズグロカモメ  ~ 魅惑のMr.黒頭巾 ~

 ズグロカモメ  ~ 魅惑のMr.黒頭巾 ~


「静岡の鳥 編集委員会」が発行している、静岡県の正式な記録をまとめた『静岡県の鳥類』 によると、県内でのズグロカモメの記録は、過去1980年~2000年までに8回、2000年以降でも2008年と2009年の2回だけという、かなりのレアものなのです。

ところが、愛知県や三重県に行けば、少数ですが見ることができるのです! それはズグロカモメの食性からなるもので、彼らは小型のカニが大好物!! 干潟でカニが沢山いるところ・・・そんなところでないと見られないのです。

今回はそんなところへ出掛けてきました。

実は昨年も行ったんだけど、前日までは20羽ほどがいたのに、いたのは1羽のみで、しかも200m先の堤防にポツン! ぐわ~~ん ・・・と、見事に振られてしまいました。だから、今回は満を持してのリベンジに! 

ズグロ君の分布は極めて局所的です。東アジアにしかいなくて、中国の渤海沿岸や朝鮮半島西岸の一部で繁殖し、国内には冬鳥として飛来します。しかも、5000~8000羽ほどしかいないと言われ、VU(絶滅危惧Ⅱ類)になっているのです。

学名は「Larus saundersi 」で「サンダースのカモメ」

英名は「Saunders's Gullまたは「Chinese black-headed Gull

学名と英名は英国の鳥類学者のハワード・サンダース博士の名前にちなんでいます。


冬の間はユリカモメを少々小型にしたような、こんな感じのカモメ

それが繁殖地へ帰る直前、すなわち3月20日頃になるまでの半月ほどの間に劇的に変化して魅力あふれるカモメに変身するのです!

換羽の模様がそれぞれ違っているのがわかりますか?

そこそこの写真を撮るとなると条件がいろいろあります。晴天で微風、順光で撮れるのが午前中だけ。さらに満潮の時間も考慮せねばなりませぬ! 潮が引き始めた時に飛んでくるのです。いろいろな諸条件を満たさなければならないので、意外とハードルが高いんです。

夢にまで見たズグロカモメの乱舞!!

ズグロ君は換羽して文字通り頭が黒くなるのですが、換羽途中か終わった頃、すなわち春分の日の頃には繁殖地へ渡って行ってしまいます。

今回は30羽ほどの群れが目の前に翔んで来てくれました。これはスゴイ、ホントにすごいんです!! まだ冬羽から換羽終了の夏羽までと、いろいろなパターンが観察できました。

換羽は後頭部あたりから始まります。

おでこを残すのみ

ほとんど換羽終了

これが変身完了のカンペキな黒頭巾

どうして換羽の時期にバラツキが出るんだろうと思ったら、3月初旬頃まず成鳥から換羽が始まって、その1ヶ月前後あとから若鳥の換羽が始まるとのこと。なるほど、それで納得です。

ズグロ君がカニを捕るところを観察していると、狩りの方法が見えてきました。


こんなふうに歩きながらカニを探していますが、これではほとんど捕れません。
カニだって、そんな簡単に捕まるわけがありません。すぐに穴に隠れてしまいます。

上空からカニを探していて

見つけたら急降下!!


水深20㎝以上はありそうです。
このカワセミ型の狩りだと、カニはなかなか逃げることができません。

捕まえると浅瀬へ運びます。

チュウシャクシギのようにカニの足を取るなんてめんどくさいことはしません。

そのままガブッと一飲み!!さすがはカモメの仲間です。
ダイビングで捕まえた時の夏羽と違って、こちらの写真は冬羽ってのに気が付いた?!

食事が終わったら羽づくろいと頭かき!
カモメ類はどれも例外なく「直接頭かき」です。

もちろん、夏羽の頭かきだってゲットしてきたぜい!!

そんなこんなで、ようやく30羽ほどの群れを見ることができました。さすがさすがの「ラムサール条約」の登録地です!!

それにしても、陽炎(かげろう)っていうのは何とかならないもんかね~~!! せっかくたくさん撮れて大喜びで帰宅したのに、いざパソコンで写真を見たら、どれもピンボケばっかし!!・・・で、ゲゲゲのゲ~~です!

そりゃ、お前の腕の問題だろうって?!・・・いやいや、この春先ってのは、山だろうが海だろうが陽炎だらけなんだってば! 富山湾の蜃気楼!とまでは言わないまでも、まるで夢の中に出てきた愛しい彼女のように薄ボンヤリ!! 写真を拡大すると輪郭から何からすべてがモワ~~ン! ほんとにガックリしてしまいます。だから今回のズグロ君の写真を拡大してみてはいけません!!

この陽炎を解消するソフトが開発されたら、けっこう高値でも売れると思うけどな~~っ!! というわけで、また来年挑戦しよっと!!!








学力テスト Vol.427 頭かきシリーズ  その57

 浜松市では3/21にフラワーパークでソメイヨシノが開花したとニュースで流れたけど、連日の雨で、開催したばかりの「浜名湖花博2024」の盛り上がりも、出鼻をくじかれてイマイチといったところ。

この時期は冬鳥たちもどんどん少なくなっていくので、クイズも季節感を頭に入れながら設問をせねばなりませぬ。

今回は久しぶりの「頭かきシリーズ」が復活!こんな鳥たちに登場していただきました。前回に続いて簡単すぎるって? まあまあ文句言わずに軽~く流して満点を取ってください。

さてさて、3ヶ月ぶりの頭かきクイズはこちらです。いつも通りに「鳥の名前」と「頭かき」の方法をセットで答えてください。

頭かきの方法 1:直接頭かき 2:間接頭かき

A

B




学力テスト Vol.426-1 その解答 オオマシコ ~ しあわせの赤い鳥 ~

 オオマシコ ~ しあわせの赤い鳥 ~

冬鳥で人気No.1は誰が何と言おうとオオマシコ君!!   

浜松市内でお目にかかれることは殆どないので、見たい会いたいの願望はどんどん高まるばかり! もちろんイスカ君も人気はあるけど、やはりオオマシコ君は渡来数が少なく見るチャンスが限られる・・・というのが一番の理由!!

♀かな?

♂の幼鳥です。

これも♂の幼鳥。だいぶいい色になってきました。
真っ赤になるのには4年ほど掛かるといわれています。

「おおましこ」の「まし」とは、サルの古名からきています。ニホンザルの顔のように赤いことから「ましこ」と呼ばれ、江戸時代の頃にはこの名前か、それに似た名前で呼ばれていたようです。漢字では「大猿子」と書きます。


英名では「Rosefinch」このネーミングってお洒落でいいねっ! 学名は「Carpodacus roseus」で「バラ色の果実をついばむ鳥」

日本では「バラ色という色名は明治時代になってから使い出したので、江戸の頃にはそんな名前はなかったのです。よって紅色を指す「猿子(ましこ)」という言葉を使ったと思われます。

他にも調べてみたら、あったあった「猿子鳥(ましこどり)」というのが俳句の季語にもありました。


年によって渡来数にバラツキがあって、今期は大当たりだったようです・・・が、もともと渡来数が少ない鳥です。なので、勇んで行ったのにダメだったという不幸なお話も・・・。

人の不幸は〇〇の味とやら言います。
何時間も掛けてオオマシコ君を見に行ったのに!・・・、ものすご~く期待して行ったのに!!・・・、絶対会えると信じて行ったのに~~~!!! クッソ~・・・

「あんなの、どこにもおりゃせん!はるか遠くをイスカがチラッと飛んでただけじゃい!」
あえなく撃沈して帰ってきた友人の話を聞くと「ふ~ん、そりゃ残念だったね~」と答えるしかありません。それ以上のことは、心の中で思っても決して言ってはなりませぬ!
それが友情とか、思いやりというものなのです!

その数日後に、同じ場所に行った別の友人は「へへへ、バッチリと雪の上の写真を撮ってきたぜい~~!!」と言ってました。
こんな話を聞いた時は、正直に「クッソ~」グギギギギ~~、ワナワナ・・・というのが素直な反応なのです! ヒトは正直でなければなりませぬ! でないと心が病んでしまいます。
オオマシコ君はそんなふうに人心を悩ませ惑わせる、極めてやっかいな鳥なのです。











学力テスト Vol.426-1 その解答 シマエナガ ~ ふわもふ~

 シマエナガ ~ ふわもふ~

今や北海道に行かなくても、どこでも売っているシマエナガのグッズ。ぬいぐるみからクッキーやコーヒーカップなど、ありとあらゆる商品が山のように作られていて、まだまだ とどまることを知りません。

こちらがお馴染みの「エナガ」君

背中の模様は全く同じで、違うのは過眼線がなく、頭部が真っ白なこと。

元々は北海道だけに生息している亜種でしたが、ここ最近では宮城県の伊豆沼でも毎年みられているようです。
そして本州のエナガも北海道南部で観察されるようになっているそうな。


このふわふわ・もふもふとしているところがたまらなく可愛いと、ついに二十四節季である1/20の大寒の日を「シマエナガの日」としたのです。

樹液に集まってきました。


左にいるのはエゾコゲラ君で、これも北海道産の亜種です。

ちなみに全長は14㎝でエナガとスズメは同じサイズですが、エナガの体重は6~8g、スズメの体重は24gなので、スズメの1/3しかありません。
ピンポン玉がふわふわもふもふしていると思えば大きさの想像がつくかな?

動物写真家の小原玲さんが2016年に出版した「シマエナガちゃん」がブームの火付け役なのです。もちろん、鳥屋の間では昔から人気がありましたけどね。

街中の公園でも見ることはできますが、動きがすばしっこくてなかなか思ったようには撮れません。まあ、これだけ撮れたら良しとしましょう。




学力テスト Vol.426 ~ あんた誰?シリーズ  その9 ~

 先日、佐鳴湖でシュレーゲルアオガエルの初鳴きを聞きました。今までの記録よりも9日も早いのでビックリ! 河津桜はもう色あせてしまい、ウグイスの囀りもにぎやかです!


さてさて、今回はまだ「頭かき」が撮れていない種類を紹介したいので、後ろ姿のクイズとしました。特徴がありすぎて簡単なので、1秒で即答しましょう!!

A

B


学力テスト Vol.425-2 クイズ その解答 アカゲラ ~ 脳震とう ~

 アカゲラ ~ 脳しんとう ~

1980年に購入したこの本が私のバイブルなのです。

さすが漫画家が書くだけあって、そこらの鳥の専門家の書くような堅苦しいことが一切書いてなくて、メチャクチャ面白いのです。のめり込むように夢中になって読みました。今でも時々この本を読むことがあります。
私がまじめな文章を書けないのは、間違いなくこの岩本氏の影響なのです。

作者の岩本久則氏とはその後、個展に伺ったり、遠江支部の総会の際に講演会に講師として来て頂いたり、小笠原クルーズでご一緒したりと、いろいろ思い出がたくさんあります。

「アカゲラ」はいつ見ても、うっとりするほど美しいキツツキですね~!

岩本氏の「寄鳥見鳥」という本に、このアカゲラのことが書かれていたのを思い出して本棚から引っ張り出してきました。その一部をご紹介してみます。

「あなたもキツツキに」
アカゲラの朽木をたたいてタララララという音を出すタトイングの長さを測ってみたら0.8秒から長いもので1秒。タラララという音は、まさしくタラララで残響が響いてベルのようにリーンではない。かといってタンタンという独立音でもない。このタラララを録音してテープを1/2のスピードに落とし、さらに1/2にしてその回数を数えてみた。
すると驚くなかれ16回、多い時は18回もたたいているのだ。
つまり0.1秒に約2回たたいていることになるのである。そこで専門外家の私は、えんぴつをくわえて空カンをたたいてみた。とてもタラララとはいかない。タンタンどまりである。しかし思ったより速く反復運動ができることを発見した。
訓練次第ではあなたもキツツキになれるのである。

この文章を読んですぐ、当然ながら私もすぐに割り箸をくわえて挑戦してみました!! 
確かにどんなに頑張っても2回~3回しか叩けない!! 隣にいた同居人からは「なにしてんのさ! このバカたれが!」という冷ややかな視線!

さて、最新の調査でも当時の岩本氏が計測した回数は正しくて、1秒間に20回ほどは叩いているとのこと。
どうしてそんなことをして脳震とうにならないのか? これは長い間、学者の間でも悩みの種だったそうです。ネットで調べたらこんなのが出てきました。

カリフォルニア大学デービス校の眼科医であるアイヴァン・R・シュワブ教授が、「筋肉や頭蓋骨にあるスポンジ状の組織で衝撃を吸収しているのでキツツキは頭痛にならない」とする論文を発表して、2006年度イグノーベル賞の鳥類学賞を受賞

それが最近では下記のように説が変わりつつあるようです。

◆木をつついているキツツキの脳にかかる圧力は脳が損傷を受けるレベルよりはるかに低いことが分かりました。これは、キツツキの脳が小さすぎて、木をつつく程度の衝撃ではダメージを受けないことを意味しています。
ベルギー・アントワープ大学の研究グループが2022年発表



いずれにせよ、1秒間に20回というのは驚異的な数値には違いありませんよね?!
ヒトは口に咥える割り箸のテストでは、まるでお話にならないけど、手を使えば近いことはできるかも?
ピアニストが「トリル」とか「トレモロ」といって、同じ音や同じ和音を連続して演奏する方法があります。だけど、あれだって秒間でカウントしたらキツツキにはかないっこありません。そのくらいキツツキ君のドラミングってすごいのです!!

さてさて、本題の「対趾足」ですが、アカゲラなどのキツツキ類はいつも前後を2本づつの対趾足にしているわけではありません。

こんなふうに前指が3本の時もあります。

こちらも「対趾足」ではありません。

1番外側の指(第4趾)が後ろへ動かせるのです。すなわち前回、紹介したミサゴのように「可変対趾足」で、後ろに回してX型の「対趾足」になるのです。

「対趾足」になるのは、このように垂直に止まって木を突ついたりする場合です。

尾羽も羽軸が太くて硬く発達していて、その羽で体を支えています。その尾羽を支えている骨は尾端骨と言いますが、それが幅広で分厚くてがっしりと発達しているのです。

♀が洞の中の木くずを咥えて出てきました。

この洞でBABYが誕生するのも、もうすぐです!
元気な子どもたちを育ててね~~!!

追記:本日3/6のNHK「あさイチ ボタン特集」を見ていたら、高橋名人という人が出てきました。
私はファミコンをやってなかったので知らなかったけど、1980年代のファミコン全盛期の頃の超有名人で「ゲーム機のコントローラーボタンを1秒間に16回押す!・・・すなわち16連射できる人」とのことでした。
アカゲラ君のライバルがいたのです!