学力テスト Vol.479-2 その解答 イカル ~ 大嘴鳥 ~ 

 イカル ~ 大嘴鳥 ~

「イカル」君


「イカル」を漢字で表すと、一般的には「斑鳩」ですが、「鵤」とも書きます。
「鵤」はその字のとおりで、「硬くて角のような嘴を持った鳥」という意味です。

イカルの名前の由来としては、かの有名な法隆寺のある「斑鳩の里(いかるがのさと)」という地名にちなんだという説が一般的です。
聖徳太子もお気に入りの鳥で、太子が制定した「十七条憲法」の第一条「和をもって貴しとなす」の文言はイカルの仲睦まじい様子がヒントになったと伝えられているのだそうな。
                        (参照 「日本野鳥歳時記」大橋弘一)


顔の半分がくちばしのようです!!

くちばしは元々は上下のあごが伸びた骨です。それを「ケラチン」という角質で覆っています。ケラチンってどこかで聞いたことがある名前? そうです、ヒトの爪の主成分もケラチンという蛋白質でできています。

この巨大なくちばしは、硬くて大きな種子を割るのに適しています。そのくちばしを最大限に有効に使うために、力強いあご周りの筋肉が発達しているのです。

英名は「Japanese Grosbeak」。その名もズバリ「大きい嘴の鳥 」。何だか味もそっけもない名前です。まあ、外国のネーミングに情緒や粋を求めちゃいけませんがね。

イカル君の頭かきは初登場です。


最後の足をたたむ動作で、風切羽の後ろから足を回す「間接頭かき」というのが確認できます。

浜松の今日は40.2度という超々酷暑!! 風邪をこじらせたってこんな数字は出ません!
これじゃ一歩も外に出ることができません。
結局、今日もアイスクリームを食べながらの映画鑑賞でした。

少しでも涼しさをお届けできるように、先月に富士山麓で撮ってきたイカル君の水浴びを!

体もそこそこ大きいので水浴びは豪快です!

バシャバシャという音まで聞こえてきます。

彼もかなり暑かったのか、5分ほど入浴していました。

彼らは8月現在、まだ涼しい山の中で生活中。
冬になればまた姿を見せてくれることでしょう。


イカル君はこの太い嘴からは想像できないような美しい声で囀ります。
聴いたことがない人はぜひネットで検索してみて下さい。







学力テスト Vol.479-1 頭かきシリーズ その93


アオスジアゲハ
夏が一番似合うチョウです!!

アゲハという名前がついているのに、翔ぶスピードはタテハなみ!!

子供の頃の昆虫採集でも、この素早しっこいチョウを捕まえるのにはなかなか苦労した思い出があります。


では本題。
この鳥の名前と頭かきの種類を答えて下さい。
頭かきは ①  直接頭かき ②  間接頭かき のどちらかです。













学力テスト Vol.478-3 その解答 アオバト その2 ~ 海辺に舞う緑の宝石 ~

  アオバト ~ 海辺に舞う緑の宝石 ~

さてさて、いよいよ本題!!

海鳥は別として、アオバトは国内では唯一、海水を飲む鳥として知られています。

海水ですよ!海水! 子どもの頃はよく清水の三保海水浴場に連れて行ってもらいましたが、間違えて海水を飲んでしまった時の、あのしょっぱかったこと!! 当時は学校にプールなんて洒落たものはありませんから、夏と言ったら海へ海水浴に!

海水の塩分濃度は3.5%、そしてヒトの体内にある水分70%の塩分濃度は0.7%です。3.5%というのは1Lの水に対して大さじ2杯以上の塩をドバ~ッと入れた水ってこと!! そんなのを飲んだら腎臓が壊れてしまいますよね!

私は小学生の頃に腎臓を悪くしてしまい、数ヶ月の間、塩分は厳禁で毎日毎日、卵焼きだけという食生活を味わったことがあるので、塩分の怖さは他の人よりも身に沁みて痛感しておりまする。

まずは海鳥について・・・カモメなどの海鳥は平気で海水を飲みます。

参考資料「鳥についての300の質問」
※下段のイラストではウミツバメとウミウの言葉が逆になっていて、誤植です。

イラストで示した黒い部分、すなわち海鳥たちのおでこや、目の前あたりには「塩類腺」と呼ばれる機能を備えています。
「塩類腺」は食物と一緒に入った血液中の塩分をろ過する役割を持っています。ろ過された塩分は濃い塩水となって、鼻孔を伝ってくちばしの先から排出されます。腎臓よりもはるかに効率よく、余分な塩分を濃縮して体外に出せるのです。

さて、いよいよ我らがアオバト君の登場です。
いつもは山でひっそりと暮らしていて、ほとんど見ることが難しい彼らを観察できる絶好のチャンスです! 彼らは5月頃から10月にかけて、山からわざわざ海水を飲みに群れでやってきます。

「なぜわざわざ海水を?」という理由に対して、最も説得力がありそうな説が「水分の多い果実を好んで食べるから」と言われています。

「ズアカアオバト」が、サクランボを食べています。
※アオバトのイメージ写真として参考にして下さい。

海水を飲む初夏から秋までの期間にアオバトが主に食べているのは、ヤマザクラやノブドウといった水分の多い果実です。
その果実にはカリウムが多く含まれていますが、ナトリウムは含まれていません。そのためカリウムが過剰に体内に摂取され、ナトリウムとのバランスが崩れてしまうのだというのです。

動物の体は、血中にナトリウムとカリウムの双方がバランス良く存在していないと、体の機能や調整を維持できません。つまりナトリウムなどの摂取によってミネラルバランスを調整しているのです。
※ミネラルというのは体内では合成できない必須栄養素の一種で、ナトリウムはそのミネラルの中の1つです。

そこでアオバト君は海水からナトリウムを体内に取り入れて、ミネラルバランスを保つ必要があるために飲んでいるというのです。
地域によっては、ナトリウムを含んだ温泉や鉱泉水を飲むという行動も見られます。
理由は同じです。

アオバト♂が海水を吸水中。

水の飲み方:ここでまたアオバト君の特殊能力が発揮されます。

ハト類は他の鳥と違って水に嘴を入れたら、すくい取らないで、下向きのままゴクゴクと飲むことができます。哺乳動物が水を飲むのと同じです。
このような飲み方ができる鳥は日本国内にはいません! 世界を見回してもカエデチョウの仲間とサケイの仲間だけなのです。
簡単に言うと、舌が注射器のピストンのような働きをして、口の中の圧力を下げられるので水を吸い上げることができるのだそうな。 そしてなぜこのような飲み方ができるのか、本当のことはわかっていないのです。     - 参考「となりのハト」柴田佳秀著 -

そんなわけでアオバトたちは、毎日海水を飲みにやってきます。



ここ神奈川県大磯の照ヶ崎海岸では、そんなアオバトたちが一日に数百羽も飛んでくるのです! どこにそんなにいたのかと思うような数がひっきりなしにやってきます。調査によるとどうやら丹沢の山地から飛んで来ているようです。

アオバト ♀

アオバト ♂

海水を飲むと言っても、そんなに簡単な話ではありません。
海面が穏やかならともかく、こんなふうに波の高い日もよくあるのです。

海水を飲むのに夢中になって、おぼれて死んでしまうのもいるのだとか・・・

ハヤブサ 幼鳥

しかも時々、ハヤブサもアオバト君たちを狙って飛んでくるのです。
おちおち海水を飲んでなどいられません!

アオバト ♂ ×3

アオバト ♂ ×2

ある専門家によると「海水をゴクゴクと飲むのは明らかにナトリウムの取り過ぎで、カルシウムやヨウ素を取り込んでいるのかもしれない。」とのことでした。
もちろんアオバト君たちには腎臓があります。それでもゴクゴクなのです!

屋久島以南の南西諸島にはアオバトの近縁種で「ズアカアオバト」がいますが、海水を飲んだという記録はないとのことです。アオバトと同じような果実食なのになぜ?? と、されています。

ホントのところはアオバト君たちに聞かないと判らないことばかり! 謎多き、そして魅力あるアオバト君なのです!





















学力テスト Vol.478-2 その解答 アオバト その1 ~ 妖しい瞳 ~ 

 アオバト ~ 妖しい瞳 ~

日本の伝統色の中に「山鳩(やまばと)色」というのがあります。
山鳩色というのは「ヤマバトの羽のように黄色に青色のかかった色、緑みの灰色
・・・と紹介されています。

ところで、「ヤマバトというのは通常はキジバトの別名というのが定説ですが、古くはアオバトのこともヤマバトと呼んでいました。

アオバト ♂

「アオ」という名前の付く鳥は国内では10種類ほどいますが、漢字表記の時に「緑」の字を書いて「アオ」と呼ぶ鳥は「緑鳩(アオバト)」と、「緑啄木鳥(アオゲラ)」だけです。

ちなみにアオジ、アオシギ、アオアシシギ、アオバズクなどの時には「青」という字を使い、アオサギの場合だけは「蒼鷺」として使い分けています。グレイッシュなグリーン すなわち、すこし濁った青緑と言う意味で「蒼」を使っているのです。まさにアオサギにピッタリのイメージの色!

アオバト ♀

元々、いにしえの色の表現は赤、黒、白、青の4色だけだったという説があります。その中で青というのは緑、青、青緑、青紫までの幅広い範囲の色のことを表していました。だから緑色なのに「アオバト」と呼ばれているのです。

アオバトの生息域は日本以外では中国の南東部、台湾、ベトナム。同じアオバト属に「ズアカアオバト」というのが屋久島以南の南西諸島に分布しています。このあとでも、この鳥の写真を使っていろいろ解説をするので覚えておいてください。

ズアカアオバト

さてさて、アオバトはどうしてこんな美しい色をしているのか? 
それは彼らの生活がブナやミズナラなどの広葉樹が茂った山中だからなのです。夏に山へ鳥見に行くとアオバトの声は時々聴くことがあるけど、姿を見ることはほとんどありません。この保護色を見つけることはホントに難しいのです。そして警戒心もハンパではありません。

学名 学名は「Treron sieboldii 」といいます。
属名 属名の「treon」は「臆病」と言う意味です。種小名の「sieboldii」は、かの有名な「シーボルト」のことです。つまりシーボルトが見つけた臆病な鳥」。

ここでクイズの答えを。アオバト君は、ごく一般的な三前趾足(さんぜんしそく)。
彼の頭かきの写真は撮ったことがありませんが、ハト類は「直接頭かきです。

そして今回のトピックス! アオバトで注目するのが虹彩の色! これはスゴイです!!

アオバト

ズアカアオバト


どちらの種も虹彩は内側が空色で、外側が赤紫の二重になっているのです!!
どうしてこんな二重構造になってるんだろう? この眼を通したら世界はどんな風に見えるのだろう?                                                                                                        -  その2へ続く  ー





学力テスト Vol.478-1 あんた誰?シリーズ その21

 

夏の風物詩 「ウチワヤンマ」です。

名前はヤンマですが、実は「サナエトンボ」の仲間です。
しっぽ・・・トンボの場合は「腹部といいます・・・すなわち腹部の第8節に飛び出ている「ウチワ状のビラビラした突起物」(正式には「葉片といいます)が特徴的です。
名前の由来もここからきています。

なぜ、こんなものがある?・・と思いますよね?

「うちわ」についてはしっかりと解明されているわけではありません・・・が、次のいつくかの機能があるとされています。 
① 他の♂へのアピールや牽制 ② ♀へのアピール ③ 飛翔時のバランス補助 などです。

①や②のアピールに関してですが、♀よりも♂の方が「うちわ」が大きく、りっぱに出来ています。 

この♂は自慢のウチワで♀を魅了したのかな?

♀を捕まえる時は、相手の首根っこを上から挟んでしまいます。

こうなったら「ボカ~、死んでもキミを放さないぞ!」です!

ハスの上で休息する様子は、まさに「極楽トンボ」!!


さて本題。
次の鳥の名前と足指の形を当てて下さい。


イラスト資料「鳥のフィールドサイン 観察ガイド」箕輪義隆














学力テスト Vol.477-2 その解答 ベニアジサシ ~ 青い海に舞う天使 ~ 

 ベニアジサシ ~ 青い海に舞う天使 ~


前回のエリグロアジサシのところで紹介した「スマ」が「キビナゴ」を追いかけまわしています。その逃げ回るキビナゴを狙ってベニ君が上空で待機中!

ホバリングで狙いを定めたら

それ~ッとばかりに突撃~~

ほんの一瞬のことなのでファインダーに入れるのが大変!



バッシャ~ンとダイビング!!
アジサシ類はこれ以上潜っては捕れないので、この水面ギリギリが勝負どころ。

浮かび上がった時には、見事にキビナゴを咥えていました。

ただし、いつもこのように上手くいくという保証はありません。キビナゴだって「スマ」から必死に逃げ回っている最中なのですから・・・。

だから魚を捕えるタイミングは運まかせ!!


趾(あしゆび)は前に3本、後ろに1本の「三前趾足(さんぜんしそく)」です。
水かきの種類は「標準蹼型(ひょうじゅんぼくがた)」の中では、ちょっと変わり種の「欠蹼足(けつぼくそく)」です。
なぜ「欠蹼足」になったのかはエリグロアジサシの時に書いたとおりです。

かゆくてたまら~ん!!と「直接頭かき」の真っ最中

ベニ君ってのは、ホントに青い海がよく似合います!


ダンディなのかレディなのか、いずれにせよ赤い嘴や足と黒いベレー帽は、南国の白い砂浜を颯爽と歩くモデルのようで、うっとり!!

彼らは秋になるとフィリピン から インドネシア周辺の熱帯海域に渡って越冬をします。
いつまでもこの美しい姿が見られますように!!













学力テスト Vol.477-1 頭かきシリーズ その92


 

ベニモンアゲハ ♂

南の島ではこんな華麗なアゲハチョウがフワフワと翔んでいます。

ベニモンアゲハ ♂

ベニモンアゲハはインドから東南アジアの熱帯域に広く分布しています。もともと日本には分布しておらず、迷蝶として八重山諸島で1968年頃から時々、土着として記録されるようになりました。

この赤と黒の体は、いかにも「オイラは毒を持ってるから近寄るんじゃね~ぞ~」と言わんばかりですが、実は見かけどおりの毒チョウなのです。

鳥が口に入れると、すぐに吐き出すほどまずいとのことで、次からはこのチョウを食べることはありません。

鳥はヒトほど味覚が発達していません。例えばカラスの味蕾(味覚を感知する器官)は300~500でヒトの9000に比べても少ないです。それがすぐに吐き出すのだから、よほどまずいのでしょう。

幼虫はウマノスズクサ科という毒成分を含む植物を食べ、さらに成虫になっても毒を持っています。体内に毒を溜め込んでいることを天敵に対して体の色を派手にアピールすることで身を守っているのです。

このように毒と警戒色によって、捕食者から身を守るという進化を遂げてきたのです。

ジャコウアゲハ ♂

分布域が重なるジャコウアゲハも毒チョウで、やはり同じくウマノスズクサ類が食草です。


さてさて、本題です。
この鳥の ①名前 ②頭かきの種類 さらに③足指の形 ④水かきの種類 の4問について答えて下さい。
頭かきには「直接頭かき」と「間接頭かき」の2種類があります。


上記2枚のイラスト資料「鳥のフィールドサイン 観察ガイド」箕輪義隆