ヤマガラ ~ ごちそうを独り占め ~
鳥仲間でない人と話をしていると、ごくごくたまにですが「鳥が嫌い~!」と言う人がいます。理由を聞くと「あの恐竜やトカゲみたいな、うろこ模様の足が気持ち悪~い!」と言います。そりゃそうですってば! だって鳥の祖先は恐竜なのですから!!
そこで今回は、少々この「鳥の足」についてのお話を。
ヤマガラ
まずは早速ですが解答を。ヤマガラ君の指は三前趾足(さんぜんしそく)といって、前に3本、後ろに1本となっています。水かきは生活には関係ないので、ありません。
鳥の足指は4本が基本形です。鳥の祖先である恐竜は5本指でした。しかし進化の過程の中で不要になって、足指が退化して4本になりました。
枝に止まる、歩く、捕食する・・・などに最も適した4本が「基本形」に進化したと言われているのです。
ヤマガラ君の指の裏にはこんなふうに、けっこう弾力のありそうな肉が付いています。
これで木の枝に密着しやすくなっているのです。
さらに、後趾(こうし)すなわち後ろ指はかなり長くて、爪もこのように思い切り湾曲しています。これによって、樹上で枝をしっかり摑まえることができ、幹の樹皮などにもひっかけやすくできています。
スズメ
片や、スズメ君も三前趾足ですが、後趾は指も短く爪もそんなに曲がっていません。これは地面でエサを食べたり、穂にとまることが多いので、この方が便利なのです。
このように骨格の基本は同じでも、彼らの生活様式に合わせて微妙に違っているのです。
忘れないうちに頭かきの解答を。今回はいつもとちがう角度からの撮影。
ご覧のように、羽の内側から足をくぐらせる「間接法(または翼越し法)」です。
エゴノキ
これはヤマガラ君の大好物! 別名「ヤマガラの木」とも呼ばれているそうな。
我が家のエゴノキにも毎日数回、ヤマガラ君が来ますが、今朝は2羽で来てくれました。
食べ方のパターンは2通りあって、1つは写真のように果柄(かへい:実をぶらさげている茎のような部分)を千切って、すぐさま咥えたまま飛び去る個体・・・そんなに急いで、もしかして好きな子にプレゼントするのかな?! もしかして今朝、連れてきたのはエゴの実をプレゼントした彼女かな?!
2つ目のパターンは、エゴノキの枝の中で果肉をちぎるもの。
この果肉はかなり硬いので、指先でしっかりと握りしめてから、このように背伸びをして上から「トリャ~~」とばかりに全体重をかけて突つきにいきます。
それでも2分ほどすると・・・
出た~、このこげ茶の実がお目当ての品!
この中味を出すと、ほとんどの場合は飛び出してどこかへ運んで行きます。
もしかしたら、冬に備えてどこかに貯食しているのかもしれません。
さてさて、今回はどのくらいの硬さなのかを、我が家のエゴノキの実で実験してみました。
「ありゃりゃ~、アンタってよっぽどヒマで、時間つぶしに苦労してるんだね~」なんて言ってはいけません。これだけヤマガラ君が執着している食べ物がどんな味のか知りたくなるのは、鳥屋としては当然のことで「ただ純粋に、ひたすら探求心あるのみ!」です。
手前のこげ茶色のものが芯に入っている実で、大きさは7mm程度。
この実は果肉よりもさらに固いのです!ラジオペンチでようやく割れました。
おっと、撮影中にアリ君が遊びに。
この薄茶色のヤツが、実を割ったら出てきたもので、これこそがお目当ての品!!
アリ君もこれには興味を示したようです。もちろん、私も試食してみましたぞっ!!
どんな味かって?・・・意外と軟らかいのですが、味も素っ気もないただのナッツでした! いろいろ調べてみても、ヒトの食料には向かないとされていました。
ただ、その果肉に含む有毒成分であるサポニンを使って魚類を獲ったり、水に溶けると石けんのように泡が立つので、昔は「シャボンの実」と呼んで洗剤に使ったりしていたようです。
でも、きっと彼らヤマガラ君たちにとってはカロリーが一杯ある魅力的な食べ物なのでしょう! この部位にはサポニンは含まれていないので全然問題なし!!
ヤマガラ君にとっては、このエゴノキのナッツは冬越しのための大事な保存食糧なのです。
なかには持ち帰らずに、このナッツまでを出したヤマガラ君がいました。
きっと、すぐにでも食べたかったんだろうね。
今年はエゴノキが大豊作なので好きなだけ食べとくれ~~