学力テスト Vol.396-3 その解答 トラフズク ~ イキイキは やっぱり夜でなきゃ ~

 トラフズク ~  イキイキはやっぱり夜でなきゃ ~

いきなりですが、このScull(頭蓋骨)のイラストが今回の主人公です。

嘴の形はやっぱり猛禽類! 参考資料:「TRACKS & SIGNS」

そのScullに羽衣をかぶせるとこんな形に

嘴が見えるように、ちょっと左を向いてもらいました。

頭に生えている長~い耳のような羽毛は「羽角」と呼びます。

羽角は単なる飾り羽で、イヌやネコが耳を動かしていわば「聞き耳」を立てるようなことはできません


昼間、珍しく目を開けました。


こちらは体を細く見せて「木化け」してます・・・要するに擬態です。こんな時は羽角も長く伸ばします。このように擬態の時に役立っているという説もあるようです。

人には耳たぶが付いていますが、鳥には耳たぶがありません。単に目の後ろに穴が開いているだけ! これを「耳孔」といいます。

人の耳は左右が同じ高さの位置にありますが、フクロウ類は左右の高さがズレています。
これは音の発生源を正確に突き止めるために、わざわざ非対称に進化しているのです。
それとパラボラアンテナのような形をした顔の羽毛も、集音には強力な武器なのです。

分かりやすく書いてあるイラストを見つけました。

参考:「岩本流 野鳥観察手帳」この本は私が初めて手にした鳥の本で、今でも時々読んでいる私のバイブルです。
 
 岩本久則氏の本はその後何冊も購読していますが、やっぱりこれが一番です! 漫画家が鳥のことを面白おかしく書いた、当時としては異色の本で1978年が初版。ビギナーの皆さんに、ぜひともおススメです。


 トラフズクを漢字で書くと「虎木兎」。褐色の模様がトラのようだから「虎斑」、「木兎」とは「木に棲む兎」のことで、兎(ウサギ)の耳のように長い「羽角」から付けられた言葉です。

 トラフズクの活動は、当然ながら夜! 主食となるネズミなどを探して飛び回ります。
夜行性なので、昼間ではイキイキとしたその状態を見ることができません。
それにしても良い子の寝る時間に一人でフクロウ類を探し回るなんでのは、晩酌もできないし、ハードルが高すぎます! 

 それでも昼間のボーっとしている、チコちゃんに叱られるようなトラ君では、いくら見ても、すぐに飽きてしまって物足りません。
やっぱり無理をしてでも夜に探さねばならぬ!! じゃなきゃ「オイラの大好きなのはフクロウ類さっ!」なんて人に自慢できる話じゃありません!


そんなこんなで悩んでいる時、何と「コロナ」という思わぬ事態になったのです!! 

 そんな頃の話です。
その1ヶ月ほど前に知り合ったばかりの深夜営業をしている友人(JAZZが大好き&ウクレレ名人)は店が終了した後、一人で毎晩のようにナイトツアーをしているというのです! 当然ながらトラ君はかなりの確率で見ているとの話! ゲゲゲ~ッ!
トラ君に逢えるのは彼に頼るしかいない! 直感的にそんなふうに感じました。
なぜか、ピピっと来るこんな時の直感は、自画自賛ながらものすご~く鋭いのじゃ!!

 恐る恐る彼に「トラ君をどうしても見たいんだけど・・」とのお願いに「あっ、いいっすよ!ちょうどコロナであと1週間ほど休業だから案内しますよ!」とすっごく快い返事! 

 うわわ~~! やったやった~!! これぞ天の助けというかコロナ様様です! 千載一遇とはこのことです! もう出会えたも同然です! 思わず彼にハグしたくなりました!

 コロナ禍で悩んでいる人には申し訳ないけれど、『死ぬ前に一度でいいからジックリ・タップリと生き生きとしたトラ君に逢いたい!』というチャンスはこの時しかありません!!
「Great Chance」どころか「A Chance in a Million」なのです! 
残り少ない人生で、考えている暇なんてありません! まずは実行あるのみ~!!


 それからは夕方に家を出て、片道2時間半というトラフ通いが始まりました。予想はしていたけどかなり手ごわいです! なかなか会えません! やっぱりな~ そんなに簡単に見れっこないよな~ シュン!

 それから数日後、昼夜逆転の生活パターンでヘロヘロになり、半分は諦めた心境になりかけた頃のことです。ついについに写真のトラ君に遭遇できたのです!!
延べ時間で換算すると、現地では15時間ほどのガイドをお願いしたことになりました。



 その遭遇の瞬間がまざまざと蘇ってきます!
突然、彼が「あ~っ!」と!「今、白っぽいのが横切ったけど見た?」
見た見た~! 視界からはすぐに消えてしまったけど、数十メートル先を確かにチラッと何かが左に動きました。内心はトラ君には見えなかったけど、彼が言うならそうなのでしょう。「あれです!あれこそがトラ君です」の確信を持った一言に、一気に緊張が高まります!

 その直後は見つからなかったけど、それから20分ほどして・・・い、い、いました~!
はるか先の杭の先に止まっているのがいたのです!! そ~っとそ~っと、じわじわと接近! ここで飛ばれたら一巻の終わり! 

トラ君の後ろに見えるのは月ではなくて、遠くにある工場のライト

農道が狭いのでこれ以上の角度が取れません。


 それでも何とか車窓から上半身を乗り出して、照明を入れずにという角度も数枚撮れましたが、ここでムクムクと新たな欲望が! ・・・こうなったら正面から撮りたい!
一度見てしまったら、そして撮ってしまったら、私の欲望は留まることがありません!

 「車から出たら100%飛んじゃうから降りちゃダメ~!」と言われたけど、トラ君は横向きのまま動かないし、さて困った!!

 「トラ君の向こう側に行けば正面から撮れるみたいだけど、ダメかなあ?」
「一度バックしてから遠回りすれば反対側に行くことができるけど、そうするとその間に飛んじゃうかもしれないよ! どうする? たいていの場合は暗くなったら飛んじゃうことが多いけどネ」
「ギクッ ウ~ン」数秒の間、しばし熟考です。
「決めた!向こう側へ回りたいっす!! 飛んでしまってもいいから向こう側へ行ってくださいっ!」
「了解! さあて、どうなるかな?! ムフフ」不幸な結果なんて考えたくありません!

 どうかいてくれ~と、祈る気持ちで迂回しました。
こんな時ばかりは神様、仏様は言うに及ばず、弁天様、天照大神様、キリスト様、ゼウス様、アフロディテ様~・・・と世界中のあらゆる神様への祈願です!!


 そのあとの長~い数分後、迂回してきたら・・・うわわ~、同じ杭にいました! ちゃんと待っていてくれたのです!! これはまさに奇跡としか言いようがありません!

それから、じっくりと時間をかけて少しずつ接近!

まだ大丈夫かな? 
嫌がっている様子はありません、ウン、大丈夫そうです。

これ以上は、画面からはみ出してしまってムリムリ~! 
ピントの最短距離もここらが限界!!

 でもトラ君はまったく動く気配がありません! ひいき目に見ても、のんびりとこちらの挙動を楽しんでいるようです。

 オレンジ色のつぶらな瞳で見つめられると、撮るのも忘れて心臓がドキドキ・バクバクになってしまいます! そりゃそうでしょ、トラ君の呼吸までも聞こえるような超至近距離なのですから!

 友人曰く「すっご~~い!! こんな長時間、ジ~ッとしていてくれることなんて、まずないですよ!」

 知らないうちに1時間以上、いや1時間半くらい撮りまくっていたようです。
あまりにも夢のようで、時間の経つのを忘れてしまいます。夜は深々と更けていきます!

トラ君もモデルに飽きてきたのか時々 居眠りを

 撮影終了後、もちろん その友人には心から感謝感謝で思わず抱きついちゃったような気がします・・・が、今まで目の前にいたトラ君のことばかりが頭の中を占めていて、その辺りのことはよく覚えてません!!

 それから1年が経過しても、まだトラ君との遭遇が鮮明に思い出されます。
今年は冬鳥が不作だったからトラ君にも逢えなかったけど、来年こそまた逢えますように!


















2 件のコメント:

  1. 片道2時間半の場所へ通った数日間の思い!!
    神様に通じたんですね~(^^)
    夜のトラ君との遭遇!!正面からのオレンジ色のつぶらな瞳!!
    ブラボー\(^_^)/来年もまた会えると良いですね♪

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  2. どうしても見たいと思ったら、いつもよりも強い意志を持って行動しなくちゃなりませぬ!
    その時の感動は何物にも代えがたいものです!

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