学力テスト Vol.505-3 ヒメアマツバメ その1 ~ 羽毛布団 ~

 ヒメアマツバメ その1 ~ 羽毛布団 ~

ヒメアマツバメ

名前に「ツバメ」と付いているので紛らわしいのですが、「ツバメ科」とは全く異なる種の「アマツバメ科」に属します。どの図鑑を見てもツバメとは離れたページに掲載されているのはそのせいです。彼らは国内では他にいない「皆前趾足」という足指の形をしています。

           
「鳥のフィールドサイン  観察ガイド」より 箕輪義隆

世界に目を向けても、「皆前趾足」という鳥は「垂直な壁にしがみつく」「枝にぶら下がる」という特殊な生態を持つものばかりで「アマツバメ科」以外には「アブラヨタカ科」と「ネズミドリ科」しかいません。

もともとはアフリカから東アジアにいたる熱帯から暖温帯地方に広く分布していた鳥で、日本にはいませんでした。 日本で最初の記録1966年代に神奈川県や鹿児島県で観察され、翌年の1967年7月には静岡市内で、国内で初めて繁殖が確認されました。留鳥として越冬できるようになったのは暖かい羽毛布団で包まれた巣があるからです。

ヒメアマツバメの巣については。以前も紹介しましたが、よくコシアカツバメの巣をリフォームして使います。ヒメアマツバメは留鳥なので、夏鳥であるコシアカツバメがいなくなった巣に羽毛を持ち込んで自分たちが越冬できるように改築するのです。



どちらもコシアカツバメの巣ですが、右側がヒメアマ君がリフォームしたもので巣の入り口からは羽毛がはみ出しています。
これなら土台ができているので、リフォームの手間はさほどかかりません。もちろん巣の中にも羽毛がいっぱい!

ヒメアマツバメの巣で地上からは10mほどのところにあります。

こちらはコシアカの巣を利用するのではなく、最初から自分で作った巣です。今回お邪魔した厚木市文化会館では80羽以上が生息していて、35個ほどあるすべてがこんな巣でした。
今回訪問したら、係の方がとても貴重なものを見せてくれました。


今年になって、ヒメアマツバメの巣が落ちてきたのです。大きさは20㎝以上。
この巣を作るには4ヶ月以上掛かるといいます。

羽を咥えて戻ってきました。


どうしてそんなに巣作りに長時間掛るのか? 
それは巣材の羽毛やワラのようなものはすべてヒメアマツバメが空中を漂っている羽を集めたものだからです。それに自分の唾液を混ぜて作るのです。
飛ぶことに特化した彼らは地面に降りたり、電線に止まることはありません。巣材の調達はすべて空中からなのです!  次回へ続く。

P.S. 厚木市文化会館はヒメアマツバメの見守り活動のほか、観察会(不定期)を実施しています。2023~24年に行われた建物の改修工事の折にも、ヒメアマツバメとの共生を図るために騒音や振動、塗装の臭い、クレーン車の影響などにも専門家指導のもとに配慮して工事を実施したため、すべてのアマツバメが逃げなかったことを確認したとのことでした。すばらしい!!
















学力テスト Vol.505-2 オニヤンマ ~ 最強クラスの肉食獣 ~

 
オオスズメバチ

 こちらは昆虫界では最強クラスというイメージのオオスズメバチです。オニヤンマとオオスズメバチはどちらも「最強クラスの肉食獣」ですが、どちらが強いと思いますか? 

百田尚樹著の「風の中のマリア」という本をぜひ読んでみて下さい。ファーブル昆虫記とはちょっと違う描き方が、とても面白いです。図書館にもありますよ!

「風の中のマリア」ではスズメバチの天敵はオニヤンマと書かれています。スズメバチをしのぐ猛スピードで襲ってくるから逃げきれない・・・と。

オニヤンマ ♂

NHKが最近の「ダーウィンがきた 20周年記念スペシャル」で「オニヤンマの飛行スピードは時速100㎞」と言っていましたが、とんでもない誤りです! 私がフィールドで見ていた感覚ではせいぜい50~60kmほどです。気になって調べてみました。

大学などの研究室でギンヤンマを風洞実験   (人工的に風を起こして、けむりを利用して空気の流れや気流を可視化する実験)にかけて、スピードカメラで測定したデータでは、通常の巡航速度は時速20~30km程度で、獲物を襲う瞬間は50~60km・・・当時のこの実験はTVでも放映していました。しかもNHKで! 

ギンヤンマ ♂

この件について、さらに調べたら見つかりました! 
NHK特集「トンボになりたかった少年」1984年放映 というタイトルです。
航空力学の世界的権威である東大の東昭(ひがしあきら)教授がトンボのメッカである磐田市の桶ヶ谷沼に来てギンヤンマを捕獲し、大学に持ち帰って風洞実験をしてトンボの翅の動きなどを解析したのです。

私もワクワクして見ていたのを憶えています・・・あの時の東教授がギンヤンマを捕まえた時のうれしそうな顔!ようやく鮮明に思いだしましたわい! 

近頃は記憶を思いだすスピードがハグロトンボ並みにスローモーに! 以前はシオカラトンボくらいのスピードはあったのに・・・トホホです。

ではなぜ時速100㎞という数字が出てきたのか? これは1917年に海外の研究者が「直線距離を飛ぶトンボをストップウォッチで計測したらその数字になった」という非常にいい加減な古い記録が独り歩きしたようなのです。

NHKが言っているんだから絶対に正しい」と信じ込んでしまう子どもたちや生き物ファンはたくさんいるはずです。一度テレビで大々的に流れてしまうと、それが「正しい知識」として世間に定着してしまうのが一番怖いことです。

多分、放映後にそれを見ていたトンボの研究者や愛好家からはクレームの嵐だったことでしょう。




学力テスト Vol.505-1

 

オニヤンマ ♂

「ゲゲゲの鬼太郎」のちゃんちゃんこと同じカラー・コンビネーションに、緑のお目目が印象的なトンボ界の王様!
先日、暑さしのぎに涼しいお山へ行ったら、池の周辺で悠々と飛び回っていました。

オニヤンマ♀ 
腹部の先端から産卵弁が突出しているのが見えます。

池のすぐ横にある30m四方の草地の上空を、何と♀までもがゆったりと。
この時は♂2、♀1の合計3頭で、♂同士も縄張り争いも何もしないでゆったりと飛び回っていました。
しかも♀がパトロールすることはないので、「あれ? どうして?」と思いました。

だとすると、ここはきっとオニヤンマにとってかけがえのない餌場なのでしょう。そんな場所ではパトロールとか縄張り争いはしないでひたすら食事の時間を楽しむところなのです。



さて、クイズです。この鳥の① 名前 と ② 足指の形 の種類を当ててください。


          
足指の形
「鳥のフィールドサイン  観察ガイド」より 箕輪義隆

学力テスト Vol.504-3 ツバメチドリ その2 ~ 華麗なるダンスステップ ~

 ツバメチドリ その2 ~ 華麗なるダンスステップ ~

ツバチ君が地面で狙う昆虫は オケラ、ミミズ、ガの幼虫・・・エトセトラ。

ジッと様子をうかがっていて、かすかな物音や動きがあるとサササ~っと早足で、というか千鳥足で駆け寄って捕まえます。そんな時は「おおっ、やっぱりチドリじゃね~」と思わずにはいられません。

 
その動きを見ているとマイケル・ジャクソンのステップを彷彿とさせます!

時にはムーンウォーク!

時にはサイドウォーク

はたまたトウ・スタンド

うわわ~、ロボット・ダンスも!
そのたびに女性ファンの悲鳴があちこちから!

決めポーズなんてしたものなら、ファンの女の子たちは失神寸前!

あれれ、ファンをよく見ると、どさくさに紛れて若作りのファッションを着こなしてはいるものの、いい歳こいた妙齢のオバチャマたちまでが混じっているではありませんか! 


マイケルの曲に合わせて獲物を捕るツバチ君にはこの曲がピッタリ!!
「ビリー・ジーン」
https://www.youtube.com/watch?v=JclD3zMboIM


7月に南西諸島の宮古島に行った時に初めてツバチ君の幼鳥に出会えました。
浜松ではまだ見たことがない、今年生まれのホッカホカの幼鳥でした。

かつては静岡県や愛知県でも繁殖記録はあったようですが、最近ではそんな話はトンと聞きません。沖縄本島などでは定期的に繁殖しているようなので、そこで産まれた幼鳥たちが東南アジアやオーストラリア北部などに渡る途中だったのでしょう。この時は毎日10羽づづくらいの幼鳥が見られました。 

これが幼鳥の羽の拡大で、「サブターミナルバンド」が見られます。
terminal  : 最後・先端 
subterminal :最後の一つ手前、先端直前

羽の先端 → 白っぽい羽縁 → そのすぐ内側の黒っぽい帯状の部分・・・それを「サブターミナルバンド」といいます。

こちらはオジロトウネンの幼鳥

これにも「サブターミナルバンド」がハッキリと確認できます。

「サブターミナルバンド」は数種類のシギチドリ類に出ますが、羽が摩耗すると消失します。幼鳥特有の模様ということではなく、一部の成鳥にも見られます。

幼鳥たちがこんなカッコいい大人に成長して、大空を飛び回るのを楽しみにしています。

ツバチ君たちがカッコよく飛び回る時のBGMはこれっきゃない!! 
「トップ・ガン Danger Zone」
https://www.youtube.com/watch?v=ihZt11oTnWk

















学力テスト Vol.504-2 ツバメチドリ その1 ~ 足指から見える生活スタイル ~

 ツバメチドリ その1 ~  足指から見える生活スタイル  ~

名前のとおり、ツバメチドリは「チドリ目」に属していて、コチドリなどチドリ類とは近縁です・・・が、その体型や生活スタイルはだいぶ異なります。

1.「趾(足指)」の形のちがい

コチドリは前に3本指で後趾がありません。
これを「三趾足(さんしそく)」といいます。
中指と外指の間に水かきも付いています。

コチドリは地面や水辺を歩いたり走ったりしながら採餌をします。それには三趾足の方が素早く動けるのです。足も長めに進化しました。いわば「地上採餌型」。

ツバメチドリは前指が3本と後ろ指が1本の三前趾足(さんぜんしそく)です。
鳥では最も多い標準型です。

こちらには水かきはありません。もしかしたらあるかもしれないけど、写真で見る限りはほとんど見えません。そしてコチドリよりも足は短めです・・・といっても標準だけど。

もちろん地上でも歩き回って採餌をします・・・が、ツバチ君の場合はそれよりも飛翔力が優れている点を最大限に活かして、空中で虫を捕食するのを得意としていて、それが名前の由来にもなっています。よって「空中採餌型」。




2.「頭かきの方法」のちがい

コチドリは「間接頭かき」

ツバメチドリは「直接頭かき」

ツバチ君の頭かきが「直接型」なのは体の長さに対して羽が長い (飛行機や鳥の世界の専門用語では「翼比」とか「アスペクト比」といいます)ので、「間接型」よりも「直接型」の方が楽なのです。

翼比というのは翼の細長さの割合をいいます。例えばグライダーやアホウドリのように翼が細くて長いのを「翼比が高い(ハイ・アスペクト比)」。戦闘機やキジのように翼が短くて横幅が大きいのを「翼比が低い(ロー・アスペクト比)」といいます。


ツバチ君は空中を不規則に飛び回る昆虫を捕えるために変幻自在に飛び回ることができます。それが進化を重ねて得た究極の細長い翼なのです。

ちなみに白い腰は「フラッシュカラー」といって、仲間からもよく見えます。
「飛び立つぞ~」とか「敵が来たぞ~」と伝える合図になるのです。
またはタカなどに襲われた時に、この白い部分へ敵の注意を引きつけ自分の急所への攻撃をかわすという目くらましの効果もあると考えられているのだとか。       

その2へ続く








学力テスト Vol.504-1 頭かきシリーズ その115 


地元の佐鳴湖でも花火大会がありました。


浜松で有名な花火大会といえば弁天島とか鹿島橋とかいろいろありますが、ここ佐鳴湖だって負けちゃいません!ただ1000発で1時間だけっていうのは、ちと寂しいけどネ!

ではでは本題
この鳥の① 名前 と ② 頭かき ③足指の形 の種類を当ててください。
※頭かきには「直接頭かき」と「間接頭かき」の2種類があります。


足指の形
「鳥のフィールドサイン  観察ガイド」 箕輪義隆









学力テスト Vol.503-2 アカエリヒレアシシギ ~ かなり変わり種 ~ 

 アカエリヒレアシシギ ~ かなり変わり種 ~ 

まずは名前の由来から紹介しましょう。

こちらがメスの夏羽(繁殖羽)
 首筋が美しい赤になっています。

オスも夏羽では首筋が赤くなっています。

英名は「Red-necked Phalarope」で、「Phalarope」とはヒレアシシギ属(学名:Phalaropus)全体を指す総称です。
ギリシャ語でオオバンを意味する「  phalaris 」と、foot(足)を意味する「  pous 」が組み合わされた言葉です。

ん?オオバンと何の関係が?・・・それは趾(足指)を比べてみれば一目瞭然!

オオバン 
皆さんご存じの見事な「弁足」です。

そしてこちらがアカエリヒレアシの弁足。

この趾を撮りたくて粘った成果が出ました!
この趾こそが「ヒレアシシギ」の由来なのです。

イソシギ

一般的なシギ類はこのイソシギのように趾の間に小さいヒレ(水かき)を持っているだけです。イソシギの趾は「三前趾足(さんぜんしそく)」で、このようなヒレの形を「半蹼足(はんぼくそく)」といいます。
片や、ヒレアシ君たちはこの発達した「弁足」を活かした方法で採餌をします。
すなわち水面をクルクルと泳ぎ回りながら趾を動かし、その渦で浮上してくる水生昆虫などを捕えるのです。

復習として、以前「足指のクイズ」の時に使っていた資料を添付します。

水かきの種類

足指の形

上記 2つのイラスト資料「鳥のフィールドサイン  観察ガイド」 箕輪義隆


さらに、サブタイトルで「変わり種」と言ったのは「一妻多夫制」であるということ。
今まで国内で観察された鳥類約600種以上の中では、ヒレアシ君(ハイイロヒレアシシギも含む)、ミフウズラ、レンカク、そしてお馴染みのタマシギだけなのです!

※日本鳥類目録改定第8版(2024年9月発行)では、自然分布種は644種となっています。これにはソウシチョウやガビチョウなどの外来種は含みません。

左がオス 右がメス 5月撮影

右の方が明らかに美しい模様をしています。これは同じく一妻多夫性のタマシギを思い浮かべてもらえば判りますが、メスの方が美しくて彼女は産卵のみ。抱卵や子育てはすべてオスまかせなのです。
こんな話をすると、たいていの女性は「ホント?楽でええな~」とおっしゃいますが、産卵というのはものすごく体力を使うのです。

彼らが繁殖場所として選んでいるのは北極圏で、夏がとても短く、カラスやキツネなどの天敵も多くいます。だから彼らは「一妻多夫制」という独自の方法を選択して、出来るだけたくさんの卵を産んで育てる戦略で進化したのです。

当然ながら、メスは健康でダンディなオスをゲットできるように、そしてメス同士の争いにも勝てるように華やかな衣装をまとうことになったのです。

5月に航路で見かけました。
これから北極圏まで行く途中です。

北極圏生まれの幼鳥 9月撮影

メス 夏羽から冬羽に換羽途中 8月撮影

頭かきは「直接型」

一般のシギチのように海岸線や干潟にいることが少なく、ごくたまに海岸に近い田んぼなどで見かける程度です。だからこの頭かきは私にとっては貴重な貴重なお宝ショット!

数年前の5月中旬の頃、隣県で田んぼに50羽+の情報が!!全てが夏羽のアカエリ君たちが入ったと聞きました、もちろん翌朝 速攻で行ったのですが、もぬけの殻でガックリ! 至近距離だったので地元のオバチャンがスマホで撮ったと聞いて、さらに追い打ちのガックリ!!

そんなふうに、運が良ければ数十羽の団体さまに遭遇できることもあるとのことですが、私にとってはそんな夢の話はいつになる事やら・・・。