ヒメアマツバメ その2 ~ ひめあまだんご ~
「動体視力」という言葉を知っていますか? 動体視力とは、動いている物体の形や動きを、視線を外さずにすばやく見分ける能力のことです。
健康診断などで測る「静止視力」とは全く別物です。例の「ランドルト環」という、アルファベットの「C」のような、あのマークを使ったのが静止視力の検査です。動体視力はそれとは異なり、脳の処理能力や眼球を動かす筋肉が深く関わっています。
私は学生時代に汽車通学をしていた時に、電柱に書いてある看板などを見たり読んだりする訓練をしていました。時速100㎞近くのスピードの汽車から近くのポスターを読むのはなかなか至難の業ですが、慣れてくると意外と読めるようになるものです。何のための訓練かって?そりゃあなたヒマだからです!
ヒメアマツバメ
「そのう」が膨らんでいます
拡大するとこんな感じ
「 そのう(素嚢)」というのは食道の一部が膨らんでいて、一時的に貯蔵するところです。
その部分がパンパンに膨れています。捕まえた虫がこの中にいっぱい入っていて、それを巣で待つ可愛いヒナたちへ持ってきたのです。
ヒメアマ君の生活圏は空中のみ! ツバメのように地上に降りたり、電線に止まることはありません。捕まえる昆虫はすべて空中に飛んでいるものだけ!!
虫が集まっている場所を見つけると、大きな口を開けたまま高速で突入します。
一つずつ捕まえるなんて面倒なことはしません。口を「虫取り網」のように使って、飛びながら次々と虫を丸呑みにするのです。いわばザトウクジラの空中編!
そんな時に発揮するのが動体視力! ヒメアマ君にはヒトには一瞬にしか見えない虫の動きが、まるでスローモーションのように見えているのです。
アニメで例えると、動きがスムーズに見えるために必要な枚数は「秒間24枚」が世界的な基準なのだそうな。
それがヒメアマ君だと、ヒトからは早すぎて見えない虫の羽ばたきや急旋回も間違いなくスローモーションに見えているのです。だからヒメアマ君が「秒間24枚」のアニメを見たら、出来損ないのパラパラ漫画にしか見えないのだそうな。
ヒトの目には、最もモノがはっきりと見える中心点(中心窩(ちゅうしんか)といいます)が1つしかありません。そのため、遠くか近くのどちらか片方にしかピントを合わせられません。
ハヤブサやタカ、ツバメのような空中ハンターの目には、1つの眼に「2つの中心窩」があります。言わば、近距離用のマクロレンズと遠距離用のワイドレンズの2画面を瞬時に使い分けて見ることができるという遠近両用の目を持っているのです。
ヒメアマ君の目は、タカやツバメとはさらに違った特殊な視覚構造を持ち、特に近くを見る中心窩(側頭中心窩)が発達しています。高速で飛びながら目の前の小さな昆虫を追うため、視力だけでなく「動きを捉える能力」にも特化しているのです。
ゴチャゴチャ書いたのを簡単にいうと「ヒトには一瞬(または全然)しか見えない虫の動きが、ヒメアマツバメにはしっかりと細かく見える眼を持っている」ということなのです。
そんな超能力を発揮して捕まえた虫を「そのう」に入れたら、唾液と絡めて「団子」を作るのです。それを称して「ひめあまだんご」と言うことにしました。ヒナたちにとっては「みたらし団子」よりおいしいかもね?
今度も何か咥えています。
何と、巣材用に羽根を咥えてきました。
羽根ってそんなに空中に漂っているのでしょうか?
ヒメアマツバメ
ヒメアマ君のの体長は13㎝ほどでスズメよりも小さいのです。ただしスズメよりもはるかに翼開長が長い(28㎝)ので飛んでいる時には大きく見えます。
ヒメアマツバメ
彼らの飛翔速度はツバメとは比較にならないほど速いのですが、同じ仲間のアマツバメやハリオアマツバメほどではないようです。
アマツバメ
アマツバメは体長が20㎝ほどで翼開長は48㎝。体長はヒメア君よりも1.6倍と大きく、高山や断崖絶壁など、風の強い上空をダイナミックに高速飛行するのに適しています。飛ぶスピードも巡航速度で40㎞/h、最高速度は160~170km/h。
最高速度は体の大きさが推進力に比例するので、大型のアマツバメの方がパワーがあり、より速いトップスピードを出せるのです。
それに対してヒメア君の飛ぶスピードは巡航速度は40㎞/hとあまり変わりませんが、最高速度は110~120km/hといわれています。
都市部のビルや橋の下などに営巣し、小回りを利かせてヒュンヒュンと軽快に飛び回ることができる機動性に優れているのです。
近年になって日本に定住するようになったヒメアマ君。浜松でも時々コシアカツバメの巣があるところをチェックしているけど、いつかきっと来てくれることでしょう。それまでにこちらも動体視力を鍛えておかにゃならぬ。おっと反射神経もかな? じゃあ待ってるでね~!