トキが江戸時代までは普通に見られたという理由は、幕府による禁猟と、各藩の大名による保護が浸透していたということですが、実のところは、将軍や大名の趣味であるタカ狩りの獲物が少なくなるから規制していた・・・と言われています。
それが1868年(明治元年)になって明治政府は鳥獣保護の制度を廃止してしまい、狩猟解禁としたのです。許可さえあれば誰でも銃を持って狩猟できるようになったのです。その頃、外国からは新しい銃が次々に輸入され、国産の銃も作られるようになりました。
狩猟人口は一気に増え、トキを始めとしてコウノトリ、ツル類、ハクチョウ類、ガン類など大型の鳥類が標的され、次々に乱獲されてしまったのです。
特に人里に住み、人を恐れなかったトキは、このために絶滅寸前まで追い詰められてしまいました。その後1892年(明治25年)に狩猟規則が、1895年(明治28年)狩猟法が定められたのですが、その時点でもトキは保護鳥類に指定されませんでした。
トキと同じように絶滅が心配されたコウノトリと一緒に保護鳥に指定されたのは、時すでに遅い1908年(明治41年)だったのです。
1933年(昭和8年)の記録には、トキは能登半島に5~10羽、佐渡島には20~30羽が生息していたと推定されています。ところがその後の太平洋戦争でトキの保護運動はうやむやに。
それどころか国力増大のために開拓事業を優先し、食料増産のための開墾、森林伐採が行われるようになってしまったのです。そして農薬や除草剤も大量に使われるようになりました。農薬の使用は鳥たちのエサを劇的に減少させてしまいました。これではトキの保護も何もあったものではありません。
このようにしてトキは限りなく減少して行ったのです。
トキの絶滅の話や、その後の復活に関わってきた人たちの努力は到底書ききれるものではありません。今回、私が紹介する本やネットなどでも詳しく載っているので、そちらをご覧ください。
地球上には約200万種以上の生物がいます。そのなかで鳥は17~20世紀までのわずか300年間に75種が絶滅! 現在ではほぼ毎年1種が絶滅しているというから恐ろしい話!
さて、今回はトキの羽が黒くなる!! という繁殖羽について。
トキが1月頃から7月にかけて、羽毛が黒く変化するのは知られていましたが、その理由は謎でした。研究者の間でも「トキの白色と灰色は、成鳥と幼鳥の違い」とか「オスメスによって違う」、「トキには白色型と灰色型のふたつがある」など色々な意見が出ていました。
トキについて長年研究してきた佐藤春雄氏は「トキの羽は季節によって変わる」という事を突き止め、1957年(昭和32年)学会で発表しましたが、最初の頃は受け入れられなかったようです。
いろいろな鳥が季節によって色を変えることはよく知られている話です。その仕組みとは ①一年に一回全身の羽が抜け替わって色が変わる・・・ライチョウやオシドリなど。②羽がすり減ることによって、異なる色になる・・・ノビタキやオオジュリンなど。
というのが代表的な例ですが、トキはどれにも当てはまらないようなのです。
1968年(昭和43年)1/21 トキ保護センターが開かれて2ヶ月ほど経った頃の事。飼育員の近辻宏帰氏は水浴びしているトキが、その後 羽づくろいをしているのを見てトキが灰色に変化していくのを発見したのです。
トキが頭を掻くと、頭と首の部分から「ふけ」のような黒い物質が落ちたのです。トキを捕まえ、頭と首の部分の羽毛を分けて調べると、その部分の皮膚は内分泌によって黒くなっていて、羽毛の間にも粘性のある「黒いふけ」が付いていたのです!
そのあと注意して見ていると、水浴びの後のこすりつけ動作で頭と首、肩、背中と少しずつ灰色の部分が増えて、色もだんだんと濃くなっていったのです。3/14には黒っぽい灰色の羽に変わってしまいました。
その後、この繁殖羽に変化することは鳥類学者の内田康夫氏によって詳しく研究されました。
今なお、絶滅種が増え続けている事が心配です。
返信削除トキの羽色の変化を見ると繁殖期がよく分かります。
[黒い羽の不思議]
体から出るふけのような物をこすりつけて
だんだん黒くなっていくって不思議!!
飼育員の方の観察眼!ブラボー\(^_^)/
藪内正幸氏のトキの絵 素晴らしい~\(^_^)/
fuutenhideさん
野生の繁殖羽に会えたら良いですね!
トキに関する本を読んでいると考えさせられることばかりです。次回はシリーズの最終回になります。
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