イスカ ~ 摩訶不思議な造形美 ~
そもそも「イスカ」っていう名前の由来は?
語源は古語の「いすかし(很し)」という形容詞で「心がねじけている」とか「かたくなである」という意味です。(日本国語大辞典)
江戸時代には心がひねくれた人を「いすかのよう」と呼んでいたようです。
となると、さしずめ小生なんぞは多少へそ曲がりのところがあるから「イスカジイジ」ってとこかな?! いずれは「イカスジイチャン」と呼ばれるようにがんばろっと!
漢字では「交喙(いすか)」、英名では「Common Crossbill」.
学名も「Loxia curvirostra」 すなわち「曲がって交叉した嘴の鳥」
どれもこれも、すべて嘴のことを表現しています。
それは至極 当然のことで、こんな交差した嘴の形をしたのは世界中の鳥の中でも、このイスカとナキイスカだけなのですから!
図鑑を見て、ず~~っと見たい見たい、どうしても見たい~~!!と熱望していた頃の話。当時は情報と言えば図鑑や鳥関連の本からだけだったので、「イスカを見るなら戸隠の一の鳥居」と書いてあったのを信じて、毎年 戸隠へ行くたびに一の鳥居に立ち寄りました。
それから何年か後の5月4日、ついについにそのチャンスがやってきました! この写真のように20羽ほどの群れに遭遇できたのです!! 「うわわ~~、やったやった~~!!」
当時はスコープと双眼鏡だけで観察することが主流で、現在のように写真を撮る人も殆どいませんでした。念願のイスカの群れと遭遇した時に、私が真っ先にしたことは「スコープで1羽ずつ嘴を見比べる」ことでした。
イスカはカラ類のように動き回らず、比較的じっとしていることが多いのです。「お願いだから動かないでよ~」と願いながらドキドキして手が震え、感涙で視界が曇りながらも、何とかこの確認作業を達成できました。
ということで、この子は一番思い入れのある、いつ逢っても心ときめく鳥なのです。
A : ♂ 成鳥
B : ♀ 成鳥
C : ♂ 成鳥
D : ♀ 若鳥?
上の4枚の写真を見比べて、気付いたことがありますか?
先日「ダーウィンが来た!」をご覧になった方もいると思いますが、ヤツガシラのヒナの嘴は生まれてたての時は短い嘴です。カワセミも同じようにヒナは短い嘴で、どちらも徐々に成鳥のように長い嘴に変化していくのです。
そして、イスカ君の嘴はどうなのかというと、ヒナの時は他の小鳥と同じように上下が合わさっています。それが2週間ほど成長する内に、段々と上下の嘴が伸びるにつれて交差してくるのですが、その時に上嘴が左右のどちら側になるのかは決まっていません。
上の写真をもう一度よく見てください。
A:右方向へ B:右方向へ C:左方向へ D:左方向へ
このように、上嘴の位置がそれぞれ食い違っているのです。
「スコープで1羽ずつ嘴を見比べる」の目的は、「上嘴がどちら側に下がっているのか?」 を見極めたかったからなのです! 「な~んだ、そんなことかい!」と言うなかれ!
あこがれの君だからこそ、いろいろなことを知りたいのです! 付き合っている彼女の全てを知りたい!って思うでしょ?!・・・まあ、そんなようなものです。
結果は、上嘴の左右のいずれかへ下がるという比率はほぼ1:1でした。その時の感想ですが、ヒトも男女の出生は男と女が約1:1 これと似たような感じなんだな・・・自然界ってすごいな~と思いました。
この特異な嘴はマツの実をこじ開けることに進化しました。マツの実はイスカの大好物で、油脂分が多くて高カロリーなのです。
マツの実は硬い松かさの中にあるので、なかなか食べづらいのですが、イスカは松かさに嘴を差し込んで、簡単にこじ開けることができるのです。しかもこれを食べるライバルもほとんどいない!
この♀はすでにマツの実を咥えています。
どうするのかというと、嘴の上下を少し開いて差し込んでから、その嘴を合わせると松かさは容易に開くというのです。実際に食べているところを間近でじっくりと観察しても、そのこじ開けるところが見えません。
本によると嘴は上下だけでなく、左右にも動かすことができると書いてありました。それがホントなら超すっげ~~!!
イスカ君は「間接頭かき」です。
むかし読んだ本で、どこかの外国の研究者が、嘴の先端を切断したらどうなるか? の実験をしたと書いてありました。当然ながらその被害にあったイスカ君は食べ物が食べられなくて死んでしまったとのこと・・・結果は分かり切っているのに、ひどい実験をしたものです! こんなヤツは地獄へ堕ちろ~!!
未だに「ナキイスカ」君には遭遇できていません。『ナキイスカの♂を見ることができた暁には鳥屋は卒業!』と公言しているのに、まだニアミスすらありません。
私もだんだんと時間が無くなってきたけど、果たして間に合ってくれるのかしらん?
ニュージーランドに生息する「ハシマガリチドリ」
さてさて、世界にはとんでもない嘴の鳥もいるものです。この鳥の嘴は必ず右へ曲がっています。浅い川の石の下にいる、カゲロウなどの水生昆虫を捕るために進化したのだそうな!
引用:「鳥の雑学がよ~くわかる本」柴田佳秀
追伸:
この後、見つけた資料には
①「ハシマガリチドリは80%の個体が右向き」と書いてありました。
どうやらへそ曲がりもいるようです。
②イスカ類は国内ではイスカとナキイスカの2種ですが、海外には他にハシブトイスカとスコットランドイスカの合計4種類がいます。
この4種類のイスカたちは、一番小型のナキイスカは柔らかいカラマツの球果を選び、中型のイスカはカラマツよりも固いトウヒの球果を、嘴が太いハシブトイスカとスコットランドイスカはもっと固いアカマツの球果を・・・というように食べ分けることによって競合を避けているのです。
食べ分けて競合を避けてるなんて、なんてすごい!!
ー 参考:BIRDER 2007年7月号 30~31ページに掲載 ー
鳥の世界は奥が深いですね!知る事は喜びです!♬
返信削除fuutenhideさんの探究心を満たす旅はこれからも続く~
ですね\(^_^)/
探求心を満たす旅!? いやいや、ただの好奇心の塊でございます。
返信削除ナキイスカ君に逢えたら、もうそれで大願成就なのです。
好奇心は大事!若さの秘訣!
返信削除何時の日かナキイスカにきっと!
会えますように~