オオソリハシシギ ~ リンドバーグも真っ青 ~
今回なぜこの鳥を選んだかというと、オオソリハシシギは渡りの「無着陸飛行の世界記録」を持っていると知ったからなのです!! 越冬地はオーストラリア南東部やニュージーランドで、4~5月にかけて北上し、アジアの国を経由して中国沿岸部や日本を通過し、繁殖地であるロシア北東部やアラスカに向かいます。
※この渡りのルートは「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ」と呼ばれています。
2020年に発表された記録によると、繁殖地のアラスカから越冬地のニュージーランドまでは太平洋を真っ直ぐに南下して何と何と12,000km!!! それをノンストップで11日間で飛び続けたという、とてつもない渡りをしているのです! 注目すべきは秋の渡りのルートが春のルートと異なること!!
12,000kmって想像がつきますか? もう少々わかりやすく身近なところで解説すると ① 東京と大阪間が400 kmだから、この30倍 ② 本州の青森県大間から山口県の下関が1219kmで、この約10倍! ③ 日本の最北端である宗谷岬と、最南端の与那国島が3,142kmだから、この4倍弱! ④ 名作TVアニメの「母をたずねて三千里」が、キロメートルに換算すると12,000km・・・etc. 要するにとんでもない距離だってことなのです!!! それをノンストップですぞっ!!
なぜこんなことが分かるのかって不思議ですよね? そもそも鳥が渡りをするということは標識調査という方法で分かってきたことなのです。
1890年頃から、捕獲した鳥に金属の足環をつけて、再捕獲または回収された場所とを直線的に結び付けてそのルートを調べていたのですが、近年では小型の発信器が発達して、その電波を人工衛星でキャッチして追跡し、ルートを解明する方法が発達しています。
シギ類の渡りは高度が500~4000m位を飛行していることが、レーダーの調査などで確認されているそうな。
大型の鳥なら発信器は背中にランドセルのようにヒモでくくりつけます。発信器の重さは5gで、鳥の体重の4%程度なら問題ないとされて装着されています。
さて、本題のオオソリハシシギですが、アラスカを飛び立つ前に充分にエサを食べて太り、追い風に乗って高度数千メートルを飛び続けます。
※この数千メートルというのも調べてみたら、なんと8000m上空を飛んでいるのが確認されているとのことです! エベレスト並みの高さじゃ~!!
そして南下する途中にあるハワイなどの島にはエサが少ないことや、降下や上昇による無駄なエネルギー消費を抑えること・・などから、ノンストップ飛行をしているらしいのです。
さらに渡りの際には、脳の片側だけで眠る「半球睡眠」を行いながら飛行しているものと考えられているそうな・・・何じゃそりゃ~!! もうビックリを通り越して、驚愕の世界!! ※「半球睡眠」についての詳細はネットで検索してみて下さい・・・自分で調べた方が頭に残るからね!
ヒトの能力と比較するという訳ではないけど、なぜか「翼よあれがパリの灯だ」という映画を思い出してしまいました。これは1927年、ニューヨークからパリへ、史上初の大西洋単独無着陸横断飛行を成功したMr.リンドバーグの実話に基づく物語。
これは32時間の冒険で、しかもMr.リンドバーグには酷な言い方だけど、本人は操縦席に座っていただけ! 距離は5832km。まあ、ここらがヒトとしての限界なのかな?! つくづく鳥の能力の高さに感服してしまいます。
シギチの場合には「カラー・フラッグ」と呼ばれるタグを足に付ける場合もあります。