学力テスト Vol.350-4 その解答 ベニアジサシ

 ベニアジサシ

嘴が赤いというだけで、どうしてこんなに魅力的?
左側の小さいのはコアジサシの幼鳥です。


「ベニアジサシ」その名前の由来はこの赤い嘴と思うでしょ? ところがぎっちょんちょん!! そうではありませぬ! まずはその名前の由来から調べてみましょう。

学名は「 Sterna daugallii」といいます。「Sterna」というのはアジサシのことで、「daugallii」すなわちダウガッリィのアジサシ」。ダウガルというのは標本採集家なんだそうな。まあ、学名にヒトの名前が付けられているのはよくある事例です。

英名はというと「Roseate Turn」つまり「バラ色のアジサシ」という意味です。な~んだ、嘴を赤いバラに例えてるじゃん! ・・・甘い! 違います!! そんな甘い思考ではコロナでイチコロです!! 呼吸が困難で死んじまうのはけっこう苦しいぞ~!
実は腹部がかすかに淡紅色をしていることからきているのです。

ここで、おなじみのお宝画像をどうぞ
お腹が微妙に淡紅色になっているのがわかりますか?

あれ? 嘴が赤くないじゃん! ・・・いいところに気が付きましたね~。
この写真は昔々、南西諸島で6月に撮っているのですが、なぜか赤い嘴ではありません。
成鳥の夏羽でも前期はまだ嘴が黒く、この頃はまだ繁殖期に入る直前だったようです。
時期的には多分、このすぐ後くらいから赤い嘴に変身したはず!


この写真を撮った時のことは、しっかりと記憶にあります。
南西諸島のどこかの港の岸壁に行った時のこと。ベニアジサシ君たちはこの地方では普通に繁殖していて、浜松で言うコアジサシのようなもので、単なる普通種なのです!

私のすぐ近く、確か5mほどの超近距離だったと思います。警戒心はまったくなし!
この時は確かに確かに、腹部が桜色に見えましたぞ!!

さてさて、この時ペアの話し声が聞こえてきました・・・私は時々、ドリトル先生のように動物たちの話が理解できるのです。これホント!

「へい彼女~ 僕ってカッコいいでしょ? 一緒にお茶しない?」
「けっ! アンタなんてキライ! 大っ嫌い! 近寄らないで~!」
「げげ~っ 何で?何で~??」
「アンタっていつもコアジサシの餌をくすねてる性悪でしょうがっ! わたしゃ、ちゃ~んと知ってんだかんね~っ! 自分で魚も獲れない甲斐性なしのくせに私を口説くなんて百年早いわ!! アッカンベ~!」
「あっちゃ~!」

※ここで「くすねてる」という話の現場写真をご紹介しましょう。

コアジサシが獲って来た獲物を、ベニアジサシが横取りしようと追っかけ回しています。

執拗に追いかけるので、コアジサシはたまらずに魚を放してしまうのです。

「私を口説くなんて自惚れもいいとこ!! 私に近づきかったら、まず自分で魚を獲ってこいってんだっ!」
「ふぁ~~い」・・・こうして♂は、うなだれて飛び去って行ったのでした。

その直後から、あのぐうたらな♂が心を入れ替えて必死に餌探し!
ホバリングで上空から魚を探します。

見事にキビナゴ?を持ち帰ってきました!!! 
さて、その後がどうなったかって知りたい? 知りたいよね~!


元々、彼女はこの彼氏が嫌いだったわけではありません。クソ真面目よりも、どっちかって言えばちょい悪タイプが大好き! ただただ、ぐうたらな性格を直してほしかっただけ!
・・・ということで、無事に可愛いベイビィが誕生!!

コアジサシの赤ちゃんに比べるとかなり黒いです!

ちょい悪君の一途な愛は鉄板をも貫く!・・・ノダ!!

※ベニアジサシは南西諸島での繁殖が終わるとオーストラリアで越冬します。
長い間、分からなかったベニアジサシの越冬地、これも標識調査で分かったことですが、2002年 沖縄でリングを付けた19羽が、6000km離れたオーストラリアのスウェイン・リーフス国立公園で見つかっているのです。




















学力テスト Vol.350-3 その解答 コアジサシ

 コアジサシ

昨年の今頃、すなわち2020年8月20日 ♯314-4でコアジサシのヒナの巣立ちまでをご紹介しました。今回はその続編を。

孵化して2日以内のヒナ

そこから数日後

2週間以上が経ちました。大きさは親と変わらないほどになりました。

初めて飛んだ日!! まだ100mほどしか飛べません。

これくらいになれば、すっかり自立です。

羽根の雨覆に茶色のうろこ模様があるので、これは幼鳥です。
おっと、魚を発見! ホバリングをして飛び込むタイミングを計ります。

発進!

ドッポーン

うまくいったかな?

成功です!! 見事にキビナゴ?をゲット~!
魚の獲り方は、親から教わらなくてもDNA遺伝子でバッチリです。

コアジサシは、はるばるオーストラリアから渡ってきて日本で繁殖し、秋にはまたオーストラリアへ渡っていきます。なぜそのようなルートまで分かるのでしょうか? 

そんなことが分かるのが「鳥類標識調査」です。
標識調査はヨーロッパで110年ほど前から始まったようです。
標識調査は自然条件下で鳥のことを調べる唯一の方法といわれます。

足に付けるリングには固有の番号や記号、連絡先が刻印され、いつどこでリングを付けた鳥なのか、そこから年齢や寿命、渡りのルートなどいろいろなことが分かるようになっているのです。

鳥が渡りをするとはだれも思わなかった時代・・・古代ギリシアの哲学者アリストテレスは、夏鳥がいなくなる時期は木の洞や、土の中に潜って冬眠すると考えていました。さもありなん!

ここで、コアジサシと同じような行動をするツバメについてのお話。
日本でも標識調査が本格的に始まり、ツバメにリングを付けて放鳥した結果、日本から遥か彼方の東南アジア・・・すなわちフィリピン、マレーシア、ベトナムといった国々から情報が寄せられました。足環の付いたツバメを見つけ、そのリングを調べたら『TOKYO JAPAN』と書かれていたというのです。


さてさて、フィールドで撮影をしていると、ごくたまにですがリングやフラッグをつけた鳥を発見することがあります。コアジサシでも数回経験してます。

♂の右足にはリングが見えます。2021年撮影

こちらは2016年撮影

この左足に青いフラッグ&右足にリングが付いているコアジサシについて調べてみました。

どうやら東京の昭和島にある「森ヶ崎 水再生センター」屋上のコアジサシの繁殖地で、「NPO法人 リトルターン・プロジェクト」が背中にGPSを装着した個体のようです。
※リトルターンとはコアジサシの英名です。

GPSを付ければ衛星で追跡してどのようなルートで渡るのかも分かります。
最近、激減が心配されているコアジサシの生態調査なのです。

南へ渡っていく時期になりました。

来年もまた元気な姿を見せてくれますように。















学力テスト Vol.350-2 その解答 カイツブリ 

 カイツブリ

毎年、初夏になるとこの微笑ましい光景を見たくて、今か今かと心待ちにしています。

この水路では毎年3ペアほどが繁殖します。カイツブリは通常4~6個の卵を産みます。
ところが、今年は或るペアだけが繁殖が遅れてしまいました。何回産卵しても失敗ばかりで、その原因は天敵によるもの。
天敵は思ったよりも多くて、イタチ、ヘビ、それにカラスなどです。天敵は卵を盗んだり、ヒナがかえってから襲ったりといろいろ。

しかし、この夫婦は揃って不屈の精神の持ち主でした。

何と何と4回目の挑戦で、7羽のヒナを育てたのです。過去に見ているヒナの最高は6羽なので、ギネスものです!

夫婦揃ってのえさ運びは一日中大忙し!


ママが持ってきたテナガエビは少々大きすぎたようです。子供たちは「こんなに大きくちゃ食べられないよ~」とエサを見つめるばかりで飛びついてきません。
ママの方は「もっともっと沢山食べて早く大きくなって~~」との願いが込められているのか、大きめの餌ばかりを持ってきます。

一番右にいる末っ子のおチビちゃんは、まだ生まれてから3日しかたっていません。

最初の子と比べたら1/4ほどで、推定でも5㎝もあるかどうか。
この場所は巣からは200mも離れていました。この時期はまだ巣に帰って休息をとったりするのです。

右から2番目手前が末っ子のおチビちゃん

本来なら1週間ほどは、巣の周辺でのんびりと育てるのですが、今回は4回目の挑戦とあって親もかなり焦っていて、相当 無理をしているようにも見受けられます。

末っ子はいつも遅れがちの行動で、兄弟について行くのに必死です。
がんばれ~~!!

疲れ果てて、オネエチャン?の背中で休憩

こんなのは初めて見ましたが、オネエチャンの方は嫌がる素振りもしません。

この後、毎日毎日が雨続きで様子を見に行けなかったけど、元気に育ってくれたかなぁ?!








学力テスト Vol.350-1

 さてさて、またしてもパズル型クイズです。今回は何が出てくるやら?!?! 

◆区分:鳥

◆名前:5~6文字で3種類

◆不要の文字:2文字

◆使える単語:1度だけ

◆許容範囲の解答:① 過去の出題で、たまにあったことですが、出題者の意図しない答えが出ても、それが正しい鳥の名前だったら正解とします。 ② 場合によっては(無意識ではありますが)文字が不足している時もあります。

まあ、そんなわけで気楽に答えてみましょ!・・・という、かなりいい加減なクイズです。

リ・ベ・ブ・ニ・ナ・ツ・タ・ジ・ジ・シ・シ・サ・サ・コ・カ・ア・ア


以下については、クイズとは全く関係ありません。

「オオマルハナバチ」というマルハナバチの仲間がいます。マルハナバチというのはミツバチのように女王を中心として、多くの働きバチが仕事を分担して生活する「社会性昆虫」です。

ノリウツギで吸蜜

マツムシソウで、スジボソヤマキチョウと2ショット

ノコンギクで吸蜜

この辺りでは見かけることはなく、もっと標高の高いところに行かないと出会えません。

マルハナバチの仲間は、どれもずんぐりむっくりのオデブちゃんで全身が毛むくじゃら!! ハチなので毒針は持っていますが、まず刺されることはありません。だから心配することなく近づいて撮影ができるのです。






学力テスト Vol.349-4 その解答 コノハズク

 コノハズク

コノハズクの別名は「声のブッポウソウ」

漢字では「木葉木菟」。名前の由来は「木の葉のように小さいミミズク」

サイズは20㎝だから手のひらサイズで、ムクドリよりも小さい日本最小のフクロウ類です。

※ブッポウソウについては学力テストVol.347で詳しく書いてあるので、そちらをご覧ください。

コノハズクがなぜ「声のブッポウソウ」と呼ばれたのか、手元の「甦れ、ブッポウソウ」著:中村浩志 に詳細が書いてあったので、紹介しましょう。

 1935年(昭和10年)6月7~8日のこと、NHKラジオが愛知県の鳳来寺山からブッポウソウの鳴き声の実況中継をしました。この時、東京・浅草で傘屋を営む愛鳥家から、この生放送中に飼っているコノハズクが反応して、同じ声で鳴いたと知らせがありました。

 そこで、鳥類学者の黒田長禮博士はそのコノハズクを借り受けて自分で観察し、確かに「ブッ・ポー・ソー」と鳴くのを確認。さらに上野動物園に問い合わせて「姿のブッポウソウ」が夜はジッとしていて物も食べないことも確認したとのこと。

 そしてさらに、山梨県在住の中村幸雄さんはこの放送を聞いてから、苦労の末に「姿のブッポウソウ」を鉄砲で撃ち落とすことに成功・・・それが6/12のことだったそうな。

 その直後に開かれた日本鳥学会でこれらの事実が報告されて、弘法大師がコノハズクのことをブッポウソウと名付けてから約千年の間、間違って付けられていた名前にようやく終止符が打たれたのです。

 本来なら「ブッ・ポー・ソー」と鳴くコノハズクをその名前にするのがよいのですが、いろいろ混乱が予想されるので、ブッポウソウの名前はそのまま残ったとのことです。

夜行性なので、こんなふうに寝ているのは普通のこと。

運が良ければ昼でも起きているのが見られることが・・・それはアナタの運しだい!
この愛くるしい表情にハートがズッキュ~ン!! この時は羽角が閉じられていました。

普段は羽角もしっかりと見えることが多いのです。

 これは赤色型と呼ばれるタイプで、ビギナーの頃、「カキコノハ」という洒落た名前で教わりました。「カキ」とは柿色のことです。


 こんなふうに樹木の傍でスリムになるのは「木化け」すなわち擬態で警戒中のとき。
こちらは標準型の朽木色をしています。

かつては亜種扱いだった「リュウキュウコノハズク」
懐かしいポジフィルム時代のお宝写真が残っていました。

 現在、国内では「リュウキュウコノハズク」と呼ぶのが一般的で、亜種ではなく れっきとした独立種とされています。1988年以降から最近までは「セレベスコノハズク」という名前でも呼ばれていたことがありました。

 リュウキュウコノハは奄美大島や石垣島に行けば、かなりの数が生息しているようです。声もよく聞こえるので、そちら方面に旅行した時にはナイトツアーに参加してみてはいかがですか?!?!













学力テスト Vol.349-3 その解答 アオバズク

 アオバズク

青葉の茂る頃に東南アジアから渡って来るフクロウ類だからアオバズク。漢字表記では「青葉木兎」。何ともわかりやすく、言い得て妙とはこのことです。

「木兎」とは「木に棲む兎」のことで、兎(ウサギ)は耳が長いことからフクロウ類の「羽角」をウサギの耳に見立てて付けられた言葉です。

ちなみに「フクロウ」と「ミミズク」の違いはフクロウには羽角がなく、ミミズクには羽角があるとされているけど、しっかりとした線引きがあるわけではありません。

アオバズクのように羽角がなくてもミミズクという名前が付いたり、シマフクロウのように羽角があってもフクロウという名前が付けられることもあります。

このアオバズクのヒナたちは巣立ちして1週間ほど。

この時期のヒナは、よく頭を回す動作をします。

アオバズクのヒナたちが、クルクルと頭を回す行動について、その理由を知るには、まずフクロウ類の眼球と頸椎の構造を知る必要があります。

こちらをジッとみて「あんた誰? なんか用?」

鳥類の眼球は眼窩(がんか)と呼ばれる頭蓋骨のくぼみの部分に収まっていて、固定されているので、ヒトのように眼球を動かして視線を変えることができません。

おっ、上に何か来た~!

さらに、フクロウ類は物を立体的に見るように両目が正面についているので、側面についている他の鳥類よりも視野がとても狭いのです。
ヒトは顔を正面に固定して、左右に眼だけを動かせば170の視野角なのに対して、フクロウ類は110度と狭いのです。

ホイ! 右向きもヘッチャラ

そこで、この不自由さを解消するのに役立っているが頸椎、要するに首の骨です。 哺乳類の頸椎はほとんどが7本で構成されています。ヒトも、あの首の長~いキリンでさえもこの数は同じ!

それに比べ、鳥類の頸椎は8本から25本あって平均は14本、フクロウ類も14本です。
要するに羽毛で隠れていて外見からは分かりにくいけど、鳥類の頸椎は前後にS字に曲がっていて頭を自由自在に動かせるのです。これはサギ類を見ればわかるでしょ?!

「ボクに興味あんの?」

正面を向いた状態から、左右にそれぞれ270度も回転できます。まるでエクソシストなみ!! このようにフクロウ類は首を回すことによって視野を補っているのです。

たまには羽根もストレッチ ウ~ン、気持ちいい~!

ヒナは視力がまだよく発達していないので、巣立ち直後からしばらくは、こんなふうにいつも首を動かして物をよく見る練習をしている・・と聞いたことがあります。確かに、親はこんなふうにしょっちゅう首を動かすことはしません。

フヮ~、今日もヒマだな~~ と大あくび

おなかが空いちゃった~と、腹ばいになって休憩

あんまり退屈だから、ひそひそ話
「今、カアチャンたちが昼寝してる隙に、内緒でどこかへ遊びに行っちゃおうか?!」

 また、ボクのところへ遊びに来てね~・・・とVサイン!!