トキの魅力は何といっても、この「とき色」に尽きます。
では、どのようにしてこの「とき色」は生まれたのでしょうか?
鳥の羽の発色の主な仕組みは ①「カロテノイド(またはカロチノイド)色素」、②「メラニン色素」、または ③「構造色」この3つが主な発色です。
地球上に生息している約1万種の鳥のほとんどが、この3つの仕組みによる発色です。「色素」による発色は一部の光を吸収して起こる発色で、「構造色」は羽毛に当たる光の散乱によって発色するので、色素とは違う光学的な仕組みによる発色です。
「メラニン色素」とは黒~茶色系の色素のことで、動物界に広く存在し、もちろんヒトにもあります。
「カロテノイド色素」というのは、動植物に存在する赤や黄色の色素の総称のことで、天然の色素として食品添加物としても使用されています。
植物の中で「カロテノイド」が知られているのは、ニンジン・トマト・トウガラシなどの赤色ですが、トキがこれらを食べているわけではありません。
トキのエサとなるのは、ドジョウ、カエル、タニシ、イモリ、バッタ、イナゴ、コオロギなどで、もちろんザリガニやサワガニなども食べます。
このザリガニやサワガニなどの甲殻類に含まれている「カロテノイド」を体内に取り込むことによって「とき色」が生成されているのです。植物はほとんど食べないようです。
緑の田んぼにトキがたたずんでいます。遠くから見ればただの白い鳥。
それがパタパタをして、羽の裏側の「とき色」が見えた瞬間は、そこにパ~っと華やかな桃色の花が開いたようです。
ブルブルした時・・・モフモフのモップのようです。
風切羽だけでなく、背中の羽の裏側にも「とき色」が見えます。
羽の表側を見ると、羽の羽軸もしっかりと「とき色」になっているのが分かります。
トキは不思議な鳥です。
この鳥を見ただけで幸せな気持ちになります。
さてさて、このあたりでクイズの答えを。
草むらや田んぼの中にいるトキの指先が見えることはなかなかありません。
そこでまた薮内正幸さんの絵本を引用させてもらうことにします。
「三前趾足(さんぜんしそく)」で、中指と外側の指の間に水かきもあり「半蹼足(はんぼくそく)」というのがよくわかります。
水かきは水田や湿地などを歩き回るのに便利なのです。
この幼鳥の「直接頭かき」を撮るのに、ものすご~く苦労しました。
大木で休んでいた幼鳥との距離は100m以上で、2時間ほど粘りに粘ってようやく撮れました。ああ疲れた~~
これは「サドッキー君」と言うマスコットで、佐渡島の小木港のフェリーターミナルにいました。高さは2mほどで、一緒に記念写真を撮っている人が多いです・・もちろん私めも。
今回の旅の想い出にこんなのを作ってみました。
玄関の寄せ植えにもトキ君が仲間入り。
これが我が家の正月飾り。
佐渡島では多くの人たちの献身的で長い努力の甲斐あって、ようやく野生のトキが見られるようになりました・・・とは言え、500羽以上が野生にいると聞いていたのに、今回会えたのは30羽ほどなので、やはり相当に警戒心が強いのかな?
今後、安定的にトキの数を維持するためには、鳥インフルエンザなどの心配もあるし、佐渡島だけでは狭すぎるとのこと。トキが住める環境を全国に広げていくことが課題なのです。
環境省ではトキの本州での定着を目指して「トキと共生する里地づくり」を進めています。
現在、候補地として石川県の能登地方や島根県の出雲市が選ばれました。その他、宮城県登米市、秋田県にかほ市、コウノトリ・トキの舞う関東自治体フォーラム(茨城県、栃木県、埼玉県、千葉県の18市町)の5地域を選定。
神経質で繊細な性質を持つトキが住める環境を作ることはたやすいことではありません。繁殖のためには、えさ場となる田んぼや湿地、さらに巣を作るための森林が必要です。
田んぼでは農薬や化学肥料を抑制してトキのエサを確保しなければなりません。今までの農業の近代化とは真逆の方法をとらなければならないのです。
下記は現在、佐渡で実践しているケースです。
佐渡市では2007年から「朱鷺と暮らす郷づくり」認証制度を実施しています。これは安全でおいしい佐渡米を認証する制度です。
それは「朱鷺と暮らす郷」という名前の佐渡産コシヒカリです。農薬や化学肥料を通常の半分以下に抑え、あぜの雑草にも除草剤を使いません。冬も田んぼに水を張って生き物が住める環境の中で作っているコメです。
大きな手間がかかっても、多少値段が高くても、自然と共生できることを優先してのコメ作りをしているのです。この「朱鷺と暮らす郷」の売上の一部は「佐渡市トキ環境整備基金」に寄付されています。
こうした環境を守ることは豊かな生態系を維持することにも繋がっていき、人間にとっても安全で安心できる環境と心の豊かさをもたらしてくれるということなのです。
トキの歴史とは、すなわち人間の欲望と身勝手に振り回されてきた歴史です。トキが地球上からいなくなるという事は、人間が絶滅するのと同じくらいの重要な意味を持っているということを肝に銘じなければなりません。
参考文献を読んで心に響いた言葉は・・・「鳥にとっての今日は、人にとっての明日」
参考と引用
◆「とき」佐藤春夫・薮内正幸 発行:福音館書店(1971年)
◆「鳥のふしぎ」川上 和人:監修 発行:ポプラ社 (2011年)
◆「トキよ舞いあがれ 国際保護鳥・トキを絶滅から守る人たち」国松 俊英:著 発行:くもん出版(1988年)◆「トキが生きていた! 国際保護鳥トキ再発見の物語」劉 蔭増:著 桂 千恵子:訳
発行:ポプラ・ノンフィクション (1992年)
◆「トキ 永遠なる飛翔」近辻宏帰 発行:ニュートン プレス
◆環境省・石川県・佐渡市 ホームページ「トキと共生する里地づくり」など
P.S. インスタグラムで「tokigrapher」を検索してみてください。産経新聞の写真報道局を早期退職して2020年に佐渡島に移住し、農業をしながらトキを撮り続けているという大山文兄さんの素晴らしい写真が数多く見られます。
また「晴鴇雨鴇」で、ネット検索しても大山氏の写真が出てきます。
大山氏は「トキ物語 佐渡島から」という写真集も出しているようです。 図書館に在庫があったので注文してみましたが、地元のカメラマンがどんなのを撮っているのか楽しみ~。