学力テスト Vol.447-2 その解答 サシバ ~ 受難の歴史 ~ 

 サシバ ~ 受難の歴史 ~

秋の風物詩であるタカの渡り
その代表格がサシバ君です。

俳句の世界では「鷹渡る」というのが秋の季語になっています。芭蕉が伊良湖岬で詠んだ「鷹ひとつ 見つけてうれし いらご崎」は有名だから知ってますよね? 

ちなみに西行法師も伊良湖岬を訪れていて、鷹とは関係ないけど「浪もなし いらごが崎にこぎいでて われからつける わかめかれあま」と詠んでいます。

伊良湖での今シーズンのカウントを見たら、サシバは6年ぶりに5000羽を超えていました。
興味のある人は「Hawk Migration Network of Japan タカの渡り全国ネットワーク」で検索すると日本全国のデータが掲載されています。

おっと、忘れないうちに足指の件の解答を。


こんな頑丈そうな三前趾足(さんぜんしそく)で、水かき無しの足指なら、相手がマムシだろうとガマガエルだろうとガッチリ抑えられたら、もう逃げることはできません。

「サシバ・差羽」という名前は少々変わっていますが、語源は「さし」すなわち「まっすぐに飛ぶ」、「は」は鳥をあらわす「羽」のことです。

獲物を狙って一直線!

または越冬地に向かってまっしぐら!!

今年は6月にツミの幼鳥を見てきたので、あの産まれた時の白いフワフワモフモフが数ヶ月経って遥か彼方の東南アジアまで渡りをするなんてことが、頭でわかってはいても信じられませんでした。

その成長過程を皆さんに理解してもらえる素晴らしいイラストを見つけました!

参考資料「フィールドガイド日本の猛禽類 Vol.2 サシバ」

左上段の左から右へ ⇒ 下段左から右へ、それぞれ1週間ごとの成長記録がイラストで描かれています。羽化してわずか6週目でこんなに大きく育ってから巣立つのです。

この本によれば、巣立つまでに必要なエサの量は1羽あたり約 5㎏ とのこと。
親鳥はヒナのために1日あたり数十回もエサ運びをしているとのことです。
エサの多くはカエル、ヘビ、ネズミなどの他、昆虫類、甲殻類、たまには小鳥類なども捕まえるようです。
よほど自然に恵まれた里山でないと、ヒナを育てられません。

幼鳥がかなり近くへ飛んで来ました!


展望台にどんどん近寄ってきました。「ん? オジサンたち、そこで何してんの? オイラを撮るの? だったらカッコよく撮ってよね~! おっと、そこのオッチャンさ~、レンズが重たくて手が震えてるんじゃないの?もっと腕力とか、あちこち鍛えないとダメじゃん!! さっき階段でよろけてたけど大丈夫け?」・・・と、言われてるように聞こえてきたのは気のせい?!

うわわ~~、突然 頭かきをしてくれました!!
もちろん「直接頭かき」です。
こんなのが撮れたら一日 し・あ・わ・せ~~!!

遠くで休憩しているサシバがいます。

拡大してみると、虹彩が茶色なので今年生まれの幼鳥です!

初めての長旅で疲れてしまったのでしょう。
早く大人たちに混じって渡っていかないと置いてかれちゃうぞ~~!!


まだこれから東南アジアまでは4000㎞以上も飛ばねばなりません!

幼鳥たちにとっては試練の連続です。

これは過去の話ですが、かつて宮古島では渡ってきたサシバたちを捕獲していました。食糧事情の悪い昔、島民にとっては貴重なタンパク源だったとのことです。
さらに調べてみるとサシバ捕獲の歴史的背景が見えてきました。

慶長 14 年(1609)、薩摩の琉球侵攻で始まった人頭税という税金で島の人たちは苦しめら れた。島の人たちはサツマイモ、その葉っぱや茎、野草などを海水で炊き空腹を満たしていた。厳しい人頭税が続いた 266 年間、島民は美味な肉類を口にすることは出来なかったにちがいない。栄養失調で苦しむ島民は何かに栄養の補給源を見つけなければならなかった。 幸いなことに、秋にサシバが大きな群れでやって来た。そのサシバで島民の栄養失調はいくらか回復したのだろう。宮古諸島では、いつ頃からサシバを大量に捕らえて食料にしていたか、はっきりしないが、この人頭税の頃と関係あるのかもしれない。苦しい食糧難の頃、 サシバは島民たちにとって非常に貴重な食物であり、年に一度の労働の疲れをいやす楽しい ハンテイングでもあったのである。 ー引用 宮古市ホームページ「宮古のサシバ文化」ー

https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouiku/syougaigakusyu/hakubutsukan/files/kiyou2019kugai.pdf

1972年、沖縄が本土に返還された時にサシバは保護鳥となって捕獲禁止となり、ようやくこの受難の歴史が終わったのです。
現在、サシバは宮古島市の市の鳥としてシンボルとなっています。


















3 件のコメント:

  1. 幼鳥は虹彩が茶色。成鳥は黄色で精悍!!
    頑丈そうな三前趾足ですね(^^)
    サシバ受難の歴史、宮古島にあったんですね~
    島民の貴重な蛋白源だったという厳しい歴史。
    今は、宮古島のシンボル~\(^_^)/
    成長記録のイラスト♬
    1週目毎の変化の早さに驚きます!!
    4000㎞以上も飛ぶための栄養をしっかりつけてあげようと!! 子育ては大変!!
    大空を飛びながらの直接頭かきゲット!! ブラボー\(^_^)/

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  2. サシバの悲劇は宮古島だけではなくて、その先の渡りルートの台湾とかフィリピンでも乱獲されていたのです。
    しかも現在でも密漁が行われているという話も!! 
    限りないヒトの欲望の深さにはあきれるばかりです。

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  3. ホントですか! 今でも密漁が!悲しい(x_x;)

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