学力テスト Vol.443-1 頭かきシリーズ  その62

 

「ウスバキトンボ」

この写真の中にはウスバキトンボが ン十頭も写っているのですが、分かるかな?

国内では最も多く見かけるトンボで、盆の頃に最もみられることから別名を「ボントンボ」とも言います。
「山本山」のCMじゃないけど、前から読んでも後ろから読んでも「ボントンボ」。

英名では「Wandering Glider」すなわち「さすらいの滑空者」。詳しいことは表紙の左側「四季の生き物たち その1」に書いてあります・・・実はこの欄はほぼ1年前から更新しておりません。デヘッ


さて本題。
いつもどおりに「鳥の名前」と「頭かき」の方法をセットで答えて下さい。

頭かきの方法 1:直接頭かき 2:間接頭かき

さらにおまけで、今回も追加問題です。いつもと同じように「足指の種類」や「水かきの種類」に関しても答えて下さい。もし、水かきの種類に該当しない場合は「無し」と解答して下さい。

A

B

足指の種類


水かきの種類
※2つのイラスト資料「鳥のフィールドサイン 観察ガイド」箕輪義隆





学力テスト Vol.442-3 その解答ー2 コチドリ ~ 捨て身の愛 ~

 コチドリ ~ 捨て身の愛 ~

まずはクイズの解答を済ませてしまいましょう。

半蹼足

拡大してみました。
中指と外側の指の間に、意外と大きめの「水かき」が見えます。

「ヤッホー」と敬礼スタイル

この写真からは「三蹼足」と「間接頭かき」ということが分かります。
前回紹介したミユビシギと同じく、後ろの足指がなくて前指のみの3本指です。

抱卵中

このママは何と何と駐車場の中で抱卵を始めてしまいました。
もちろん車が通るところからは、ホンのちょっとですが離れていますが、とにかく近い!

親が留守の時に失礼して撮影

けっこう大きな石がゴロゴロしているように見えるけど、卵を産んだところは小石だけになっていました。単にどこでもいいから産みっぱなしという事ではなくて、よ~く観察すると一応整地してから産卵している様子がわかります。

偽傷

産卵中やヒナが産まれた頃に近くに犬猫や人が近づくと、このように自分が傷ついて飛べないような「偽傷」行動をして、注意を自分にひきつけます。

卵やヒナが安全と思うまで「偽傷」行動を続けます。

無事にヒナが産まれました!


ヒヨコと同じように早成性なので、生まれたらすぐに歩き出してエサも自分で取ります。
自力で飛べるようになるまではもう少しです!! 雨やカラスなどの天敵など、独り立ちできるまでのハードルはけっこう高いのです・・・それまでは親の苦労が絶えません。








学力テスト Vol.442-2 その解答ー1 サンコウチョウ ~ 黒いリボンが森を舞う~

 サンコウチョウ ~ 黒いリボンが森を舞う ~

♂の尾羽の長さは最長の個体では34㎝ほどにまで。

全長が44㎝なので、体長の2/3以上が尾羽という事になります。スゴッ!!
この長い尾で♀を引きつけるのです。すなわち長い尾をしている方が結婚の条件がはるかによくなり、子孫を残すことができるのです。長い尾の遺伝子はその子供に引き継がれ、また♀を引きつけて結婚する・・・それを繰り返していくうちに、このように尾が長く進化したと考えられているんだそうな!

その長い尾を持った♂は、不要になった中央の2本の長い尾羽(この部位は「飾り羽」というようです)は、長距離の渡りには邪魔なので抜いて南へ渡る・・・という、まことしやかな話があるけどホントなのかな?  
抜けたとしたら、自分で抜くのではなく、不要になったから自然に抜け落ちたと考えた方がよさそうな気がするけど、どうなのかな? 

そもそも、尾が長いままでは渡らないのかな? その疑問に答えられそうな資料を見つけました。

プロカメラマンの和田剛一氏の著書「SING」の中でサンコウチョウについての記述があり、文中の「長い尾はいつ抜ける?」のページでは、①秋のタカの渡りの時の伊良湖岬で見た個体 ②同じくタカの渡りで有名な愛媛県佐多岬で見た個体 ③本州の最西端、五島列島の福江島(ここはハチクマの渡りで有名です)の大瀬崎から東シナ海を渡って大陸に渡るサンコウチョウ・・・そのどれもが尾羽が長かったと書いてありました。

※おまけの話
その1)中南米に「ケツアール」という鳥がいます。体の長さは35cmほどですが、♂はものすご~く長い飾り羽をもち、これを含めると全長は90~120cmにもなります。
「世界で最も美しい鳥と言われる所以です。 この鳥も繁殖期にだけ、♀を引きつけるために尾が長くなるのです。そんな鳥なんて知らね~って? ネットで検索すればたくさん出てきますよ! 「世界一美しい鳥と言われたら、見に行きたくなっちゃうよねっ!!

その2)東南アジアに「カワリサンコウチョウ」というのがいます。その白色型は黒っぽい頭以外は真っ白です。
ネットで写真やYOU TUBEで飛翔シーンを検索してみてください。うっとりしてしまいます!


ちょっと見にくいのですが、口の周りに固いヒゲがいっぱいあります。

これは飛んでいる虫を口の周りから逃さないのと、昆虫の羽ばたきから目を守るという事にも役立っていると言われています。

♀成鳥の尾は8㎝くらい
目の周囲の青いリングも♂のように派手ではありません。
あくまで、シックに控え目に・・・。


♀成鳥

サンコウチョウはカササギヒタキ科に属します。あまり聞き慣れないこの科には、他にクロエリヒタキしか含まれていません。

※クロエリヒタキは国内では2008年に1回だけ記録のあるド珍鳥で、東南アジアに生息しています。

カササギヒタキ科は、以前はヒタキ科に近縁とされてきたけど、近年ではモズやオウチュウに近いとされ、図鑑でもヒタキ科とは離れたページに載っています。

他のヒタキ類に比べて、暗いところが大好き! それにあまり鳴きません。暗っぽい林の中なので、まず見つけるのが大変! 撮るのはもっと大変!!

飛ぶと尾がリボンのようにヒラヒラとして幻想的に見えるところが魅力なのかな?? 

でも見るのと撮るのは大違い! かなりすばしっこいので、見つけた~!それっ急いでピントを・・・と言ってる間に飛んでしまいます。そんなのばっかし!! もうイヤじゃっ!

まさにサンコウチョウの撮影は「遠」「暗」「少な」の、「」が3拍子揃った典型なのです! このハードルを乗り越えなければダメなのです。おっと、もう一つ最も大事なのがあったっけ「撮れな」 だから4拍子の鳥なのです! ああ、ヤダヤダ~ッ!

ホントに偶然、巣だったばかりのヒナを発見! それも明るい枝に!

まだほとんど飛べないように見えます・・・という事は、この子を見ていれば絶対に親が来るはず!? こんなチャンスはそうそうあるものではありません! これぞ千載一遇!

しばらく待つと・・・来ました! ママがエサを持ってきてくれました。


そのしばらく後にはパパも!! 他には誰もいない至福の時間!! 
こんな貴重なシーンを独占取材!! 生きててよかった~~💛

まだクイズの答えの「三前趾足」の写真が載ってないって? あっちゃ~気づかれたか! 仕方ないからお宝画像を出すことに。

南へ移動中の♂若鳥

冒頭で触れた、嘴の周りの太くて固いヒゲがクッキリと!

足指の部分も拡大しました。水かきもありません。

「三前趾足」は鳥類の中では最も一般的です。
世界中の鳥の種類の約1万種のうち半分以上の約6200種を占めるスズメ目は、すべてこの形なのです。

この写真で注目すべきは足指ではなくて口の中! 何とサンコウチョウの口の中は薄緑色の蛍光色なのです! どうしてこの色なのかは不明です。調べても分かりませんでした。

ちなみに、今年生まれの♂の場合、あの長い尾を獲得するのには2年かかります。
翌年はまだ♀と同じくらいの長さしかありません。

それぞれの都道府県の県や市には花・木・鳥などがシンボルとして決められています。昭和38年(1963年)に農林省が各地方自治体に「県鳥選定」を通達、全国各地でその運動が始まりました。

静岡県でも、識者が集まって候補となる鳥を5種類選択し、それを県民の投票などで決めてもらうという形式です。
その5種類とはサンコウチョウ、ヤマドリ、セキレイ、ヒバリ、オシドリ。

その結果、静岡県の鳥になったのはサンコウチョウ。ついでにジュビロ磐田のマスコットもサンコウチョウ。
ついでに浜松市の鳥は?と言えばウグイス。・・・さてさて、あなたの県や市のシンボルの鳥は知ってるかな?


学力テスト Vol.442-1 ~ あんた誰シリーズ  その17 ~

 

リュウキュウムラサキ

今頃から10月中旬にかけて、ごくわずかですが毎年のように翔んでくる南国のチョウで、偏西風や台風などに乗ってくると言われています。
この個体は翅のどの部分も破損していなくてカンペキな状態でした。

リュウキュウムラサキは八重山諸島に行けば、沢山いて安定して見られるというわけでなく
その産地はインドからオーストラリア、さらにサモア諸島、フィジーなど、東洋熱帯から亜熱帯に広く分布していて、日本で発見されるのはそれらの南方地域からの迷チョウなのです。
そんなすごい迷チョウをこの辺りで見られるなんて、なんてラッキ~!!
生きててよかった~~!!


さてさて本題、いつものとおり次の「鳥の名前」、「足指の形」、「水かき」についての問題です。
もし、「水かき」の種類に該当しない場合は「無し」と解答して下さい。

A

B





学力テスト Vol.441-3 その解答-2 オオルリ ~ バックシャン・ホントは青くない!?!? ~

 オオルリ ~ バックシャン・ホントは青くない!? ~

オオルリ ♂成鳥

いつもベスト5に入る超人気の青い鳥
日本人ってホントに青い鳥が好きなんだよね~

オオルリ 巣立ちビナ 性別は不明

同上


キビタキ 巣立ちビナ
比較で出したけど、オオルリの巣立ちビナにそっくり

早いものは7月頃から現れ始める巣立ちビナは、住む環境も似ていてオオルリとキビタキとの見分けが厄介で苦労します。

オオルリ君 ♂   第一回冬羽
南へ旅立つ8月下旬には、すでにこんなふうに背中が青く色づいています。

♂の写真はどれも後ろ姿ばっかし!

「バックシャン」とは本来は女性に対しての褒め言葉だけど、今回だけは「後ろ姿がイケてる」オオルリ君に対する言葉として使うことにします。

「バックシャン」は「後ろ姿が美しい」という意味で、「シャン」はドイツ語の「schon(美しい)」から来ている言葉です。かつて明治から昭和初期に存在した旧制高等学校時代の学生が使っていた造語なんだそうな。

日陰のオオルリ君

この美しい瑠璃色が実は「構造色」!!
すなわち羽毛に青い色素を持っているわけではありません。羽毛の表面にある複雑な構造がこの美しい青・・・すなわち「幻の青い色」を作り出しているのです。
幻・幻想は英名でIllusion(イリュージョン)。
だからオオルリの英名は「Illusion Blue Flycatcher」というのです。・・・ウソです!!
ホントの英名は「Blue-and-white Flycatcher」というのが正解です。

だからこの上の写真のように日陰だと光の反射がないために、ただの白黒の小鳥に! 
決して露出を間違えて撮ってしまったわけではありませぬぞ!

おさらいーその1
「構造色」を分かりやすく言うと、CDを太陽光に当てるとキラキラと虹色に・・・これはCDのデコボコした表面で屈折した光が作り出している色なのです。ちなみにシャボン玉やモルフォチョウのキラキラも構造色のなせる業です。


構造色は光の働きによって生じる色であるため、光の当たり方や強さによってちがった色に見えます。

オオルリのママも登場

子育てのためには旦那のような派手な衣装は禁物!とにかく目立ってはいけないのです。だから例え派手好きの性格でも、そこはグッとこらえてこのようなシックな衣装でなければならないのです。
この写真からクイズの解答を。 
趾(足指)に注目! 「三前趾足」で、もちろん「水かき」なんてありません。


◆さて、ちょっと大事なお話。
オオルリは東アジアにしか生息していませんが、基亜種「オオルリ」と亜種「チョウセンオオルリ」の2亜種いることがわかっています。

おさらいーその2
「亜種」というのは「種」の一つ下の分類上の単位で、同じ「種」の中に地域によって、大きさとか形態とか羽根の色に変化がある個体群のことです。

もっと大雑把に言うと、「同じ種の生きものだけど、ちょっと違うような感じの生きもの」・・・って、ことなのです。

「基亜種」とは同一種内に複数の亜種がある場合、最初に発見された「亜種」のことです。「基亜種が最も基本的な亜種で、それ以外の亜種はそこから分化していった」・・・という意味ではありませんので、お間違えなきように。

「チョウセンオオルリ」と思われる個体 2022.4.27撮影

同上

英名を「Zappey’s Flycatcher」と呼ぶ幻のオオルリがいます。
亜種「チョウセンオオルリ」のことです。
この写真は日本海の離島で撮ったものですが、いつものオオルリ君の「濃紺」とはまったく違う「空色」をしていました!

撮った写真にもその特徴が表れているようなので紹介することにしました。
ホンモノならかなりのレアだそうですが・・・さて、結末は?!?!

「BIRDER特集号 オオルリ・キビタキ・サンコウチョウ」に掲載されている解説文によると『亜種「チョウセンオオルリ」を独立種とするのが世界的な流れとなっている。国際鳥類学会議(ICC)のリストではこの分類を採用していると書かれていました・・・おおっ、これが独立種となった暁には乾杯せにゃならぬ~!!

以下はネットに書いてあった情報です。

亜種チョウセンオオルリは,基亜種より淡色で雄の青色は緑色光沢がある。

このチョウセンオオルリ(以下、ザッピーと略)は、繁殖地が中国東北部ということだけが分かっており、実際の越冬地が東南アジアのどの辺りなのか、どういう渡りのルートを通って朝鮮半島中国へと渡って行くのか、その生態が全く謎に包まれています。

鳥類学の世界的権威である米コーネル大学鳥類学研究所も「とにかくザッピーの情報を集めてほしい! 渡りの途中の個体を観察したら、記録して報告してほしい。」とアジア(特に中国、韓国)のバードウォッチャーに訴えています。

渡りのルートは日本のオオルリとザッピーは重なるらしいから、もしかして日本でも・・・

                            ~日本野鳥の会 東京

 















学力テスト Vol.441-2 その解答-1 ミユビシギ ~ 波打ち際のにぎわい ~

 ミユビシギ ~ 波打ち際のにぎわい ~

波打ち際を行ったり来たりと、よく動き回ります。
どれも夏羽から冬羽への換羽中で、北の繁殖地から戻ってきたばかり。

こちらは幼鳥

足指のクイズを出しているのに、鳥の名前が答えになっているのは少々やりにくいけど仕方ありません。他にはミツユビカモメとかミユビゲラなんてのもいますね。

前方に3本指

稀に、第一趾(後ろ指)の部分にわずかに痕跡を残すような個体もいるんだって!


残された時間がないっていうのに、とてもじゃないけどそんな稀な個体を探すなんてもったいなくてできません。

ミユビ君は主に海岸での暮らし。
多くの鳥が後ろ指を持ち、木の枝をつかみやすいようになっている「三前趾足」なのに対して、その生活の中で枝に止まることもないので、後ろ指がなくても困らないし、逆にあると走り回ったりするのに邪魔なのかな? ・・・後ろ指が退化するにはそれなりの理由がありそうだけどね。

それと、「水かき」のクイズを出したのはいいけど、その答えを見せる写真がほとんどありません。ようやく見つけたのがこれ!

「半蹼型」

上の写真を目いっぱい拡大したけど
外側と真ん中の指の間の「水かき」が見えるかな?

昔、オリンピックの水泳選手で「必死に練習したら水かきが出来てきた!」
という人がいたけど、本人が言うほどではなかったね。そりゃ水かきがあったほうがホンのちょっとでも推進力が増して、タイム向上に繋がるとは思うけど。

今回のミユビ君の水かきはそれと同等クラスといった感じで、あるかないかわかりゃせんがや~!って感じでした。
文献には「シギには水かきがある」と書いてあるので、一応はそれを信用することに・・・

ここまで書いて、「この時期なら、もしかしてもっとしっかりと水かきがしっかりと撮れるかも?」とムクムクと、いつもの欲の皮が突っ張ってきてしまいました・・・というわけで書くのを中断して、よせばいいのにクソ暑い御前崎に突撃~~!!



その結果がこれで、結果としては「水かきなんて見えやしね~」を再認識!!
人生から無駄をなくすと全く味気なくなってしまうので、こんなアホみたいな無駄な時間だって有意義なのであ~る!

ついでながらクイズには出さなかったけど、頭かきは「直接型」

こんなふうに「ウッヒャ~、超気持ちいい~~」って顔をしてくれると、すっごく撮りがいがあります。

完全夏羽

今季は6月初めという、少々時期外れにこんな素晴らしい夏羽を見ることができました。
もともとミユビ君の夏羽を見るっていうチャンスは少なく、たいてい5月中旬頃までには北方へ旅立ってしまうのです。だからこんなスゴイのがたまにでも見られるから、鳥見って止められないんだよね~~