学力テスト Vol.432-1 その解答 アカヒゲ ~ 大きな勘違い ~ 

 アカヒゲ ~ 大きな勘違い ~ 


漢字では「赤髭」と書きますが、何とも変わった名前です。その名前の由来を詳しく書いたのがあったので紹介します。

勘違い その1

琉球地方に、本土とは異なる別のコマドリがいることを知った薩摩の或る人がこれを手に入れようとして「赤い毛」の鳥を仮名で「あかひけ」と書いて、使いを出してこの鳥を求めました。

ところがそれを琉球の人が「あかひげ」と誤読して、捕まえた鳥を「赤髭鳥」として渡しました。それを薩摩の人は、琉球ではこの鳥のことを「赤髭鳥」というのかと覚えて、その鳥のことを省略して「赤髭」として世の中に伝えました。世の人はこの経緯を知らずに、この鳥には赤い髭はないと疑問に思っている。笑うべし。「本朝食鑑」 参考:野鳥の名前 安部直哉


アカヒゲはコマドリの仲間で、それはそれは美しい声で囀ります。

コマドリのような単調なメロディではなく、そのいろいろ複雑で美しい鳴き声は薄暗い林の中に響き渡ります。ぜひYOU TUBEでコマドリと比較しながら聴いてみて下さい。

それほど警戒心があるわけではないので、すぐ近くで囀ってくれることも。

撮るのも忘れて、聞き惚れてしまいます。

♀には♂のような黒い髭はありません。

勘違い その2
アカヒゲの英名は「Ryukyu Robin」 すなわち「リュウキュウにいるコマドリ これは全く問題ありません。
学名は「 Luscinia komadori 」で意味は「ナイチンゲール(サヨナキドリ)のコマドリ 
これだけだと問題なさそうですが、実は多種のコマドリの英名は「Japanese Robin」で、学名が何と何とLuscinia akahige 」すなわち「ナイチンゲール(サヨナキドリ)のアカヒゲ」となっているのです。

これは明らかにアカヒゲとコマドリの学名を登録時に間違えてしまったという事なのです。
シーボルトが出した標本をオランダの王立自然史博物館に提出した時に、館長のコンラート・ヤコブ・テミンク(Coenraad Jacob Temminck)が間違えてしまったのでは?と言われています。

学名は一度登録すると変更することができないため、それがそのまま世界中の図鑑で唯一・共通の名前として使われているのです。
これは有名な話なのでアカヒゲとコマドリのことを調べると必ず出てくる話題です。


アカヒゲ君にとっては、自分の名前なんてヒトが勝手に付けて呼んでいるだけなので
まったく関係ない話! 今もその心がとろけてしまうような素晴らしい鳴き声を聴かせてくれています。

ところで、髭と言えばアカヒゲ君の顔を見た時に五月人形の鍾馗様を連想した人っている?
鍾馗様っていうのは家内安全、厄除け、無病息災の神様です。

もしもアンタの奥さまが鍾馗様の顔に見えることがあった!って言うなら、それは家の中にありがた~い神様が住んでいると思いましょう! 
そういうお前の家はどうなんだって?そんなこと怖くて口が裂けても言えませんってば!

♬ (男)何か言おうと思っても 女房にゃ何だか言えません  そこでついつい嘘を言う  
   (女)なんです あなた 
   (男)いや別に 僕は その あの パピプペパピプペ パピプペポ うちの女房にゃ 髭がある  ♬   
    「うちの女房にゃ髭がある」作曲:古賀政男 作詞:星野貞志(サトウハチロー)














学力テスト Vol.432 ~ あんた誰?シリーズ  その11 ~

 今期の春のシギチ類の渡りシーズンもそろそろ終盤戦になろうとしていますが、何んだかものすご~く盛り上がりに欠けて、ほとんど楽しめないままに終わってしまいそうです。

それでも、今期は久しぶりにツルシギ君にじっくりと逢えたのでOKとしようかな。


さてさて本題、この2種類は誰か分かるかな? 簡単すぎてクイズじゃないって?! まあまあそう言わんとお願いしますね!


A

B


学力テスト Vol.431-2 クイズ その解答 クロサギ ~ 黒いけど黒くない ~

 クロサギ ~ 黒いけど黒くない ~

前回のツルシギの夏羽が黒くなる理由がよくわからないのに続いて、これも「なぜ黒い?」について、ピーク時に比べて激減してしまった脳細胞をフル活動して考えてみましょう。

サギ類の体が白いということは、魚から上の水面を見た場合に、鳥の色が同じような明度でわかりにくい存在です。だからサギ類からすると魚を捕りやすいのです。

これと違って、海岸に生息するクロサギは多くの岩礁や砂浜などが黒い色をしており、そのような場所では身体の色も暗色である方が隠ぺい色となって、エサとなる魚からは見つかりにくくなるのす。

この写真は目視で見たのとほぼ同じような色合いに撮れています。

英名では「Pacific Reef Egret」または「Eastern Reef Heron」。
図鑑によっていろいろ呼び名が違っていますが「Reef」とは岩礁のことで、体色については触れていません。

若鳥ではまだこのように褐色気味です。

日本の図鑑ではクロサギの体は「灰黒色」とか「青灰黒色(せいかいこくしょく)」などと書かれていますが、そんな表現では味気ないので別の表現を探してみると・・・ありました! 日本の伝統色では「鈍色(にびいろ)」とか「「青鈍色(あおにびいろ)」というのが近いようです。

青鈍色」は薄く墨色がかった青色で「宇津保物語」「源氏物語」をはじめ平安文学に登場する、日本人好みの伝統色です
大河ドラマ「光る君へ」では派手な・・・おっと訂正、華麗な衣装ばかり出てくるので、この色を見つけるのは大変かも?

こちらは同じコサギ属のコサギ君


コサギ君に比べて、クロサギ君の足は太くガッシリとしていて短足です。
短いという事は言い換えれば重心が低くて安定感があるという事。決して短足を嘆くことはありませぬ!指先も太くて、岩礁地帯を歩くのに適しています。
※クイズの答えは「三前趾足」と「半蹼型」です。

そんなある日のこと、魚に夢中になって

おっとっと・・・

ズルリ! うわわ~ 落っこちる~~!!
ヌルヌルの岩で滑ってしまいました!

それを左で見ていた奥方が、このあとすっ飛んで来ました!


「ちょ・ちょいと、おまいさん!大丈夫け?」
「お、おう! で・でえじょうぶでい!!ちょっくら滑っただけでい!」
「若ぶってたって、もう昔のように筋肉モリモリじゃないし、足腰は衰えてるし、指の裏のイボイボだってすり減ってんだからさ~」
「うっせ~な~、そんなこた分かってらい!何ともねえって!!そう言うおめーだってこないだ畳のへりにつまづいて転んだじゃね~かよ~」
「あんたって金づちなんだからさ~、もしもあんたに何かあったら、あたしゃどうなるのさ~!」
「おう、でえじょうぶだってばよ~!心配すんなってば~ 死ぬときゃ二人一緒だぜい! ベイビィ~」
そうなんです、クロサギ君はこんな荒海に棲んでいるのに全く泳げないんです!

それでも果敢に、ダイビング!

というよりもフライングキャッチ!!

指先が水面に触る程度で、しっかりと小魚を捕まえた!

この間、ホンの2~3秒ほど

見事なハンティングを見せてくれました!!

泳げなくたって、やるときゃやるんです!


時には小言を言いながらも、これからも助け合い夫唱婦随で仲良く暮らしていくことでしょう。
































学力テスト Vol.431-1 クイズ その解答 ツルシギ ~ なぜ黒い? ~

 ツルシギ ~ なぜ黒い? ~

ツルシギは他のシギチ類よりも早めの3月下旬には渡ってくるようです。

これは3月末に撮ったものですが、すでに夏羽への換羽が始まっています。

こちらが冬羽

昔の歌人はツルのことを「田鶴」と詠んでいたのですが、その名前の由来はツルシギがツルに体型が似ていることから名付けられたとのことです。だいぶ小型だけどね・・・

忘れないうちに解答の写真を。

「三前趾足」で足のヒレがほんの少し付いている「半蹼型」っていうのがわかるかな? 

こんな「直接頭かき」の写真じゃ分からないじゃん!って? ・・・う~ん、もっと想像力を駆使してくれないと、シギチは水の中にいることが多いから指先を撮るのはなかなか大変なんだから、その辺の苦労を察してくれないと困っちゃうなあ。デヘッ

いいことを思いついたので、この写真にします。

拡大するとこんな感じです!

これは「アカアシシギ」といって、ツルシギと同じ「クサシギ属」です。
アカアシシギの英名は「Redshank」です。
そして、ツルシギの英名は「Spotted Redshank」で夏羽の翼上面にある白斑から「斑点のある赤い脛を持った鳥」という意味です。
学名も「Tringa erythropus 」で「赤い足のクサシギ」です。

シギ類には珍しく、かなり上手に泳ぐことができます。

ツルシギは換羽を始めたら、5月初旬の頃までにしっかりと夏羽に変身してから繁殖地へ渡っていきます。


以前は東海地方の各所で、春の渡りの時期に100 羽単位の群れが見られたと聞いたことがあります。それが1980 年代の半ば頃から個体数が激減してしまったとのこと。

激減の要因としては、生息に適した餌の多い内湾の干潟や湿地環境の消失・・・具体的には米の品種改良により、6月くらいからの水張りでも間に合うようになったとのこと。そのため、4月に渡来するツルシギの餌場となる田んぼがまだ渇いていて、採餌できる場所がなくなってしまったのです。

うわわ~っ、目の前まで寄って来て水浴びをしてくれました。

何と何と手が届きそうな至近距離

水しぶきがかかってきそうです!


近くても、まったく警戒せずに逃げないのを「フレンドリーな鳥」という言い方をする人がいますが、まさしくそんな感じです。

水浴びの後は大事な羽の手入れ

おやおや、居眠りを始めてしまいました。


秋にはまた冬羽に変身して日本を通過しますが、春ほど多くはありません。

ところでシギチ類の中で何故この鳥だけ黒くなるんだろう?・・・って、思ったことはありませんか?
紫外線は、大量に浴びるとシミやしわ、皮膚がんなどの原因になります。これは女性の紫外線に対するガードの方法を見ていればわかります。
黒色というのはその紫外線を吸収し、体を守ってくれます。
ツルシギ君もそれを理解して進化したのかな? なんちゃって!






















学力テスト Vol.431 ~ この足って誰だ? シリーズ その5 ~

 1.これは誰?


A

B

2.足指の形は?




3.水かきの形は?
2つのイラスト:参考資料「鳥のフィールドサイン 観察ガイド」箕輪義隆

鳥の名前、足指の形、水かきの形をセットで解答してください。





学力テスト Vol.430-3 クイズ その解答 ヤマドリ その2 ~ 威風堂々 ~

 ヤマドリ その2 ~ 威風堂々 ~

ヤマドリ君はベジタリアン

葉っぱをムシャムシャ

ツバキの花芯をおいしそうに食べてます。
そんなおとなしそうな彼が、このあと豹変するのです!!

さて、ここからが本題。このヤマドリ君「ねえねえ、オッチャンさ~、僕に何かちょうだいよ~~!!」と、おねだりしているわけではありません。

滅多に姿を見せず、警戒心も強いヤマドリ君がヒトに近づいてくる時というのは、100%の確率で「コンニャロメ~~!! オレ様の縄張りに入ってくんな~!、すぐに出て行け~~!!」という意思表示なのです!

ヤマドリ君の縄張りは果たしてどのくらいなのか調べてみました。

「見分け方と鳴き声 野鳥図鑑350」植村慎吾:著 によると、約10ha(ヘクタール)だそうです。

1ha(ヘクタール)とは一辺の長さが100mの正方形の面積で、1万平方メートルのこと。

ということは10ha=10万平方メートル、すなわち1辺の長さが316mの正方形の広さなのです。どうです? すごいでしょ?! さすがさすがのヤマドリ君です!

彼の足の後ろ側には「蹴爪(けづめ)」と呼ばれるものが付いています。

「蹴爪」はニワトリ系に付いているもので、主として♂同士の闘争や、外敵に対する防御に用いられ、かなり恐ろしく強力な武器です。

ヤマドリの他、キジ、コジュケイ、ライチョウなどにもありますが、どれも♂にだけ。

※ 蹴爪について興味のある方はこちらをクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=KrpnIp3LCZE

食事が終わって一息ついたのか、
ヤマドリ君が怒ってます! それもかなり怒ってます!!


冠羽を立てて「グルルル~・・・」とか「コココッ、グ~~」と低い声で鳴き続けています。調べてみると、これは♂同士が争う時に出す声なんだって!!
これはやばいぞ~~! かなりやばいぞ~~!!

いきなり突進してきました!
「うわわ~~、き、来た~~ こ、怖いよ~~!!」

フラインング・ドロップキック~~!!

いきなりジャンプして飛びかかってきて、羽をバタバタさせながら爪を立ててしがみついてきました。
そのジャンプ力は迫力満点で、あの力道山とタッグを組んでいたドロップキックの名手である遠藤幸吉をも彷彿とさせます!

「ギャ~~!イテテ~~」足でしがみついたまま、噛みつき始めました!!

執拗に、かなりしつこく噛みついて離れません!!

相手を恐怖のどん底に陥れる反則技ですが、レフェリーが止めたって止まりゃしません!!
まさに絶叫マシンと呼ばれるジェットコースターで、先頭に乗って真っ逆さまに落ちていく心境ですが、こうなったら暴風雨の去るのを、ひたすら待つしかありません!!

しかし、やられている方も、やられっぱなしじゃ男がすたります!

ビビりながらですが、真上からしっかりとヤマドリ君を撮ってます!

見たかっ!この戦場カメラマン魂!!
その心意気はまさにロバート・キャパそのもの!

さんざん脅かして納得がいったのか、ヤマドリ君は悠々とご帰還です。

尾羽をゆらゆらと優雅に振りながら去る姿には、やっぱり王者の風格が漂ってますね~!

すっごく貴重な体験をしたのはいいけど、一張羅のスラックスをズタズタに引き裂かれるところでしたわい! ああ、怖かったな~
私が襲われたところは、B氏が笑いをかみ殺しながら撮影していたようです。
後日「こんなスゴイところが撮れちゃったぜ~い!」と提供してくれました。
そりゃそうだろよ、「人の不幸は蜜の味」っていうもんね~