学力テスト Vol.478-3 その解答 アオバト その2 ~ 海辺に舞う緑の宝石 ~

  アオバト ~ 海辺に舞う緑の宝石 ~

さてさて、いよいよ本題!!

海鳥は別として、アオバトは国内では唯一、海水を飲む鳥として知られています。

海水ですよ!海水! 子どもの頃はよく清水の三保海水浴場に連れて行ってもらいましたが、間違えて海水を飲んでしまった時の、あのしょっぱかったこと!! 当時は学校にプールなんて洒落たものはありませんから、夏と言ったら海へ海水浴に!

海水の塩分濃度は3.5%、そしてヒトの体内にある水分70%の塩分濃度は0.7%です。3.5%というのは1Lの水に対して大さじ2杯以上の塩をドバ~ッと入れた水ってこと!! そんなのを飲んだら腎臓が壊れてしまいますよね!

私は小学生の頃に腎臓を悪くしてしまい、数ヶ月の間、塩分は厳禁で毎日毎日、卵焼きだけという食生活を味わったことがあるので、塩分の怖さは他の人よりも身に沁みて痛感しておりまする。

まずは海鳥について・・・カモメなどの海鳥は平気で海水を飲みます。

参考資料「鳥についての300の質問」
※下段のイラストではウミツバメとウミウの言葉が逆になっていて、誤植です。

イラストで示した黒い部分、すなわち海鳥たちのおでこや、目の前あたりには「塩類腺」と呼ばれる機能を備えています。
「塩類腺」は食物と一緒に入った血液中の塩分をろ過する役割を持っています。ろ過された塩分は濃い塩水となって、鼻孔を伝ってくちばしの先から排出されます。腎臓よりもはるかに効率よく、余分な塩分を濃縮して体外に出せるのです。

さて、いよいよ我らがアオバト君の登場です。
いつもは山でひっそりと暮らしていて、ほとんど見ることが難しい彼らを観察できる絶好のチャンスです! 彼らは5月頃から10月にかけて、山からわざわざ海水を飲みに群れでやってきます。

「なぜわざわざ海水を?」という理由に対して、最も説得力がありそうな説が「水分の多い果実を好んで食べるから」と言われています。

「ズアカアオバト」が、サクランボを食べています。
※アオバトのイメージ写真として参考にして下さい。

海水を飲む初夏から秋までの期間にアオバトが主に食べているのは、ヤマザクラやノブドウといった水分の多い果実です。
その果実にはカリウムが多く含まれていますが、ナトリウムは含まれていません。そのためカリウムが過剰に体内に摂取され、ナトリウムとのバランスが崩れてしまうのだというのです。

動物の体は、血中にナトリウムとカリウムの双方がバランス良く存在していないと、体の機能や調整を維持できません。つまりナトリウムなどの摂取によってミネラルバランスを調整しているのです。
※ミネラルというのは体内では合成できない必須栄養素の一種で、ナトリウムはそのミネラルの中の1つです。

そこでアオバト君は海水からナトリウムを体内に取り入れて、ミネラルバランスを保つ必要があるために飲んでいるというのです。
地域によっては、ナトリウムを含んだ温泉や鉱泉水を飲むという行動も見られます。
理由は同じです。

アオバト♂が海水を吸水中。

水の飲み方:ここでまたアオバト君の特殊能力が発揮されます。

ハト類は他の鳥と違って水に嘴を入れたら、すくい取らないで、下向きのままゴクゴクと飲むことができます。哺乳動物が水を飲むのと同じです。
このような飲み方ができる鳥は日本国内にはいません! 世界を見回してもカエデチョウの仲間とサケイの仲間だけなのです。
簡単に言うと、舌が注射器のピストンのような働きをして、口の中の圧力を下げられるので水を吸い上げることができるのだそうな。 そしてなぜこのような飲み方ができるのか、本当のことはわかっていないのです。     - 参考「となりのハト」柴田佳秀著 -

そんなわけでアオバトたちは、毎日海水を飲みにやってきます。



ここ神奈川県大磯の照ヶ崎海岸では、そんなアオバトたちが一日に数百羽も飛んでくるのです! どこにそんなにいたのかと思うような数がひっきりなしにやってきます。調査によるとどうやら丹沢の山地から飛んで来ているようです。

アオバト ♀

アオバト ♂

海水を飲むと言っても、そんなに簡単な話ではありません。
海面が穏やかならともかく、こんなふうに波の高い日もよくあるのです。

海水を飲むのに夢中になって、おぼれて死んでしまうのもいるのだとか・・・

ハヤブサ 幼鳥

しかも時々、ハヤブサもアオバト君たちを狙って飛んでくるのです。
おちおち海水を飲んでなどいられません!

アオバト ♂ ×3

アオバト ♂ ×2

ある専門家によると「海水をゴクゴクと飲むのは明らかにナトリウムの取り過ぎで、カルシウムやヨウ素を取り込んでいるのかもしれない。」とのことでした。
もちろんアオバト君たちには腎臓があります。それでもゴクゴクなのです!

屋久島以南の南西諸島にはアオバトの近縁種で「ズアカアオバト」がいますが、海水を飲んだという記録はないとのことです。アオバトと同じような果実食なのになぜ?? と、されています。

ホントのところはアオバト君たちに聞かないと判らないことばかり! 謎多き、そして魅力あるアオバト君なのです!





















1 件のコメント:

  1. fuutenhideさん 小学生の頃の数か月は長く感じます。
    大変だったと思います。
    海鳥には「塩類腺」があるんですね!
    だから海水を飲んでも大丈夫なんですね!!
    アオバトには「塩類腺」はない?
    アオバトが海水を飲みに来るのは5月頃から10月。
    ミネラルバランスを保つ為の塩水。
    不思議がいっぱい! 魅力がいっぱいのアオバト君ですね!

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