学力テスト Vol.448-2 その解答 コサギ ~ 美へのこだわり ~ 

 コサギ ~ 美へのこだわり ~

コサギ君は例によって黄色の足指

左足指の拡大写真

足指を拡大すると「三前趾足」で、中指と外側の指の間にホンのわずかですが、水かきがあって「半蹼足」なのが確認できます。

後ろ向きですが、しっかりと「直接頭かき」をしています。

さて、今回は「粉綿羽(ふんめんう)」というお話。
コサギなどのサギ類にはカモ類などと同じく「尾脂腺」というのが、あることはあるようですが、それよりも「粉綿羽」と言うのを使って羽の手入れをしているのです。

「粉綿羽」は英語では「powder down」といいます。あのダウンジャケットでお世話になっている綿羽(down fetherと似た羽で、同じように羽軸がありません。

粉綿羽の大きな特徴は、換羽とは関係なく生涯伸び続け、ほぐされるとケラチン質の細かい脂粉になることです。
粉綿羽は胸や脇に集中して生えています。

この粉を羽づくろいで全身の羽に塗ることで、尾脂腺からの分泌物と似た効果、すなわち水をはじき汚れを付きづらくする撥水、防塵としての役割を持っているのです。

櫛爪(くしづめ)

その粉綿羽をほぐすのに役立つのがこれ! 「櫛爪(くしづめ)」といいます。
この写真はアオサギの中指ですが、コサギも同じようなのを持っているとのことです。
この爪は扁平状で、粉末状になった羽毛全身に塗るのにも適しているのです。
※写真は「世界淡水魚園水族館」より借用しました。


クイズで出した問題・・・この足の答えは「コサギ」


出題者としては、これが「婚姻色の時の変化した色」として出題したので、それを承知の上で「(婚姻色になった時の)コサギ」と答えてくれるはず・・・と勝手に思っておりました。

ところがギッチョンチョン!!
今日、一緒にいた鳥仲間にこのクイズの写真を見せたら、即座に「こんなの簡単!コサギじゃん!!」と答えたので「なぜコサギ?」と聞いたら「足指が違う色の鳥なんてコサギしかいないじゃん!」とのことで、このお方は「婚姻色」と理解していての答えではないことが分かりました。
さらに「婚姻色で黄色の足指がこんな橙色に変化するって知ってた?」と聞くと、「フン、そんなの知らね~もん!」だって!・・・・グワワワ~~ン!! 

さらにさらに、この方に「なぜコサギの指は黄色なのかな?」という質問をしてみました。
その答えがなかなかのものだったのでご紹介!
「指先が黄色なのは、その色に魚が寄ってくるようにしているのさ!」
おいおい、それってチョウチンアンコウと同じような発想かい?!?! 
フムフム、なかなか面白い珍説ですね~!! それにしても、どこからそんなのを思いつくのかな?

一説によると「パドリング」と呼ばれる水中で足を震わせる行為で、小魚を追い出す時に目立つ黄色になった・・・と書いてあるのを見つけました。これが正解かな?

さてさて、人の想いはなかなか伝わらないものですね~! ましてや男女の中なんて、複雑怪奇極まりなくて、思っていることを100%話したつもりでも伝わらない・・・なんてことは日常茶飯事!!

それが長年連れ添った夫婦になると「ちょっとアンタさ~、人の話をちゃんと聞いてんのかよ~!」「ん?何か言った? 今、大谷がいいとこなんだから、あとあと~」「フン、大谷と私とどっちが大事なのさ~」「あん?そんなの、大谷に決まってんじゃん!」「ぐぎぎぎ~~」

挙句の果てには「行ってきま~す むかし玄関 いま布団」だとか「妖精と呼ばれた妻が いま妖怪」などと言いたい放題!!  いえいえ私じゃありませんよ、これは川柳で過去に発表されていた名句です。綾小路きみまろの「あれからン十年!」そのままですね~


さてさて、今日は11月22日で「いい夫婦の日」です! どうかこれからも波風は少なめにして、いつまでもお健やかに~~!!


学力テスト Vol.448-1 頭かきシリーズ  その67

 11月も中旬になるというのに、アキアカネは大忙し!

アキアカネ

先日、行った日本海の島の田んぼ上空では数百? いやいや、そんなもんじゃなくて数千のアキアカネが乱舞しておりました。まさに「うわわ~~!」の世界!
この光景にはただただ唖然とするばかり!!やっぱり米どころは自然が一杯なのですね~


連結で翔んでいたペアは、田んぼで産卵の真っ最中!!

さて本題。
いつものように「鳥の名前」と「頭かき」の方法をセットで答えて下さい。

頭かきの方法 1:直接頭かき 2:間接頭かき

さらにおまけで、今回も追加問題です。いつもと同じように「足指の種類」や「水かきの種類」に関しても答えて下さい。もし、水かきの種類に該当しない場合は「無し」と解答して下さい。



足指の形
水かきの種類
※2つのイラスト資料「鳥のフィールドサイン 観察ガイド」箕輪義隆










学力テスト Vol.447-2 その解答 サシバ ~ 受難の歴史 ~ 

 サシバ ~ 受難の歴史 ~

秋の風物詩であるタカの渡り
その代表格がサシバ君です。

俳句の世界では「鷹渡る」というのが秋の季語になっています。芭蕉が伊良湖岬で詠んだ「鷹ひとつ 見つけてうれし いらご崎」は有名だから知ってますよね? 

ちなみに西行法師も伊良湖岬を訪れていて、鷹とは関係ないけど「浪もなし いらごが崎にこぎいでて われからつける わかめかれあま」と詠んでいます。

伊良湖での今シーズンのカウントを見たら、サシバは6年ぶりに5000羽を超えていました。
興味のある人は「Hawk Migration Network of Japan タカの渡り全国ネットワーク」で検索すると日本全国のデータが掲載されています。

おっと、忘れないうちに足指の件の解答を。


こんな頑丈そうな三前趾足(さんぜんしそく)で、水かき無しの足指なら、相手がマムシだろうとガマガエルだろうとガッチリ抑えられたら、もう逃げることはできません。

「サシバ・差羽」という名前は少々変わっていますが、語源は「さし」すなわち「まっすぐに飛ぶ」、「は」は鳥をあらわす「羽」のことです。

獲物を狙って一直線!

または越冬地に向かってまっしぐら!!

今年は6月にツミの幼鳥を見てきたので、あの産まれた時の白いフワフワモフモフが数ヶ月経って遥か彼方の東南アジアまで渡りをするなんてことが、頭でわかってはいても信じられませんでした。

その成長過程を皆さんに理解してもらえる素晴らしいイラストを見つけました!

参考資料「フィールドガイド日本の猛禽類 Vol.2 サシバ」

左上段の左から右へ ⇒ 下段左から右へ、それぞれ1週間ごとの成長記録がイラストで描かれています。羽化してわずか6週目でこんなに大きく育ってから巣立つのです。

この本によれば、巣立つまでに必要なエサの量は1羽あたり約 5㎏ とのこと。
親鳥はヒナのために1日あたり数十回もエサ運びをしているとのことです。
エサの多くはカエル、ヘビ、ネズミなどの他、昆虫類、甲殻類、たまには小鳥類なども捕まえるようです。
よほど自然に恵まれた里山でないと、ヒナを育てられません。

幼鳥がかなり近くへ飛んで来ました!


展望台にどんどん近寄ってきました。「ん? オジサンたち、そこで何してんの? オイラを撮るの? だったらカッコよく撮ってよね~! おっと、そこのオッチャンさ~、レンズが重たくて手が震えてるんじゃないの?もっと腕力とか、あちこち鍛えないとダメじゃん!! さっき階段でよろけてたけど大丈夫け?」・・・と、言われてるように聞こえてきたのは気のせい?!

うわわ~~、突然 頭かきをしてくれました!!
もちろん「直接頭かき」です。
こんなのが撮れたら一日 し・あ・わ・せ~~!!

遠くで休憩しているサシバがいます。

拡大してみると、虹彩が茶色なので今年生まれの幼鳥です!

初めての長旅で疲れてしまったのでしょう。
早く大人たちに混じって渡っていかないと置いてかれちゃうぞ~~!!


まだこれから東南アジアまでは4000㎞以上も飛ばねばなりません!

幼鳥たちにとっては試練の連続です。

これは過去の話ですが、かつて宮古島では渡ってきたサシバたちを捕獲していました。食糧事情の悪い昔、島民にとっては貴重なタンパク源だったとのことです。
さらに調べてみるとサシバ捕獲の歴史的背景が見えてきました。

慶長 14 年(1609)、薩摩の琉球侵攻で始まった人頭税という税金で島の人たちは苦しめら れた。島の人たちはサツマイモ、その葉っぱや茎、野草などを海水で炊き空腹を満たしていた。厳しい人頭税が続いた 266 年間、島民は美味な肉類を口にすることは出来なかったにちがいない。栄養失調で苦しむ島民は何かに栄養の補給源を見つけなければならなかった。 幸いなことに、秋にサシバが大きな群れでやって来た。そのサシバで島民の栄養失調はいくらか回復したのだろう。宮古諸島では、いつ頃からサシバを大量に捕らえて食料にしていたか、はっきりしないが、この人頭税の頃と関係あるのかもしれない。苦しい食糧難の頃、 サシバは島民たちにとって非常に貴重な食物であり、年に一度の労働の疲れをいやす楽しい ハンテイングでもあったのである。 ー引用 宮古市ホームページ「宮古のサシバ文化」ー

https://www.city.miyakojima.lg.jp/soshiki/kyouiku/syougaigakusyu/hakubutsukan/files/kiyou2019kugai.pdf

1972年、沖縄が本土に返還された時にサシバは保護鳥となって捕獲禁止となり、ようやくこの受難の歴史が終わったのです。
現在、サシバは宮古島市の市の鳥としてシンボルとなっています。


















学力テスト Vol.447-1 頭かきシリーズ  その66


定食のフジバカマで吸蜜するアサギマダラ君

こちらはケイトウの花で吸蜜

こんな風景は初めて見たけど、たまには違った味覚を楽しむのかな?

そして、写真を整理していて気づいたのがこれ! 

この個体には「イラゴ」すなわち「伊良湖岬」とマーキングされています。
どこか東から翔んで来て伊良湖までたどり着いたところでマーキングされたのです。
※伊良湖岬はタカの渡りの観察ポイントとして超有名ですが、アサギマダラのマーキングポイントでも有名なところです。

ここから西の伊良湖岬までは約30kmあるのですが、もしかしたら昨日は台風並みの強風が吹いたので戻されてしまったのかな? きっとそうにちがいありません!
だとしたら、せっかく西へ向かって渡っていたのに、またやり直し!!
大変だけどガンバレ~~!!


さてさて本題。
いつもどおりに「鳥の名前」と「頭かき」の方法をセットで答えて下さい。

頭かきの方法 1:直接頭かき 2:間接頭かき

さらにおまけで、今回も追加問題です。いつもと同じように「足指の種類」や「水かきの種類」に関しても答えて下さい。もし、水かきの種類に該当しない場合は「無し」と解答して下さい。


足指の形

水かきの種類
※2つのイラスト資料「鳥のフィールドサイン 観察ガイド」箕輪義隆







学力テスト Vol.446-2 その解答 ブロンズトキ ~ 新参者 ~ 

 ブロンズトキ ~ 新参者 ~

あまり聞いたことのない名前で、載っていない図鑑が多い・・でも、どこかで見たことがあるような? それが今回の「ブロンズトキ」君なのです。

もし、見たことがあるならきっと動物園!
現在なら、掛川の「花鳥園」に行けば見られるようです。

ブロンズトキは東南アジアやオーストラリア、アフリカなどに広く生息しています。
英名では「Grossy Ibis(光沢のあるトキ)」と呼ばれています。

国内での初記録は200211月に沖縄本島と、ホンの12年前の新参者!!
だからまだ図鑑に載っていなくても仕方ありません。
それ以来2006年、2012年、2014年と単発的に記録があります。
20214月には石垣島へ何と何と19羽の大集団が飛来!!  
その群れがバラけたのか、6月には富山県射水市で1羽の記録が。
だんだんと近くなってきました。

そして今回の個体は 2024年4月:宮崎 5/12:高知 5/14:徳島 5/22:愛知・・・と流れてきたルートが分かっていて、愛知県に来たという情報が入ったその日は、たまたまヤボ用があって行けなかったために、愛知在住の友人数名に情報収集をお願いしました。
彼らも現場に行ってくれたのですが、タッチの差で逃してしまいました! ホントに逃げ足の速いヤツです。

その数日後、おおっ、ついに静岡県に飛来!! 
こうなったら「海外や動物園で見てるから、今回はパスしようかな~」などとグズグズ言っている暇はありません。

その日、私が電話をもらったのは昼過ぎで「今なら間に合うと思うよ~」とのことでしたが、その日は大雨警報発令中で、すでに雨が降っています。しかも現地までは高速をぶっ飛ばしても1.5時間!! 条件としては最悪に近いのです。

でも電話をもらった以上は「はい、わかりました! すぐに行きまっす~~!!」と言うしかありません。久しぶりに「熱血オジサン」の血が騒ぎ出しました! 
雨が降ってりゃ人は少ない! 雨は止むときだってある! ・・・ポジティブに考えたら最良とは言わないまでも、そんなに悪かない!
だって、昨日までに聞いたポイントで4回も連続して振られちゃったのですから、行くっきゃないだべ!!

あれっ、股のぞきをしてるのかな? まるで「天橋立」のようなポーズです。

70mくらいと、やや遠かったのですが何とかゲット~~!! 大雨のせいか薄暗くて、特徴的なブロンズ色もよくわかりませんが、とりあえずはゲットということで、ようやく今夜は安眠できそうです。
そして、当然ながら天候が回復する明朝未明の出発で再トライ!!

コサギ君とにらめっこ

「オメエ、どこから来たんじゃ? ここらじゃ見かけね~ツラじゃんか?!」
「オ、オイラ 迷子なんです~、ここってどこっすか~?」

そこへ好奇心が強く、チョイ悪オヤジのハシボソガラス君も登場!


一触即発のムードが漂い始めました! 緊張のあまり、ブロンズ君のトサカの毛が逆立っています! うわわ~っ、飛んじゃダメ~~!! チョイ悪オヤジ~、それ以上近づくな~


でも、そこはどこぞのおバカな生き物とは違って、無益な脅しや殺生などはしない!という自然界のルールで、大事には至りませんでした。

「はぁ~~、飛んで行かなくてよかった~」~と胸をなでおろしました。
だって、まだ着いたばかりで、ろくろく撮ってないもんね~!


ブロンズ君の特徴は何といってもこのくちばしの形。シギの仲間以外では見かけないフォルムです。さすがトキ科の仲間です。
この嘴での採餌もガツガツと慌てる風でもなく優雅そのものです。


餌は主に動物性のもので、ドジョウ、カエル、タニシ、昆虫、小魚、甲殻類などで植物は食べないようで
す。

構造色による羽の色変化もすごいんです!


赤銅色だったり、濃緑色だったりと角度によって様々に変化するのです。


この写真から「三前趾足(さんぜんしそく)」と「半蹼足(はんぼくそく)」、さらに「水かき無し」をイメージしてください。

トキの仲間は「直接頭かき」です。

やっぱり鳥たちは外で生き生きしてるのを見なくちゃね~!!

P.S. オリンピックなどでは銅メダルのことを「Bronze Medal」と言うので間違いやすいのですが、ブロンズは銅のことではありません。銅は「Copper」といいます。
ブロンズとは銅に錫(すず)を混ぜた合金で「青銅」のことです。
青銅で作られたもので、有名なのは「ロダンの考える人」とか、渋谷の忠犬ハチ公」、「奈良の大仏」・・・だそうな。